フォーサイト「2021年の注目点、気になること」【地域編】

 

 フォーサイト編集部です。新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

 本年も昨年同様、新年を迎えるに当たり、執筆者の方々に「2021年の注目点、気になること」をお聞きし、それぞれ【地域編】と【テーマ編】にまとめてみました。こちらは【地域編】です。どうぞお楽しみください(各地域の執筆者は50音順になっています。タイトルをクリックすると、それぞれの執筆者の記事一覧ページにジャンプします)。

アジア

【インド:緒方麻也】モディ政権の対米・対中「実利外交」

 2021年のナレンドラ・モディ政権は内政・外交ともに課題が山積だ。

 「改正国籍法(CAA)」問題やカシミール地方の「併合」には、国民すべてが納得しているわけではない。野党の扇動もあり、にわかに激しさを増す「新農業法」に対する反対デモも、政権基盤を揺るがしかねない状況だ。

 米国のジョー・バイデン「新政権」に対する備えも十分ではない。米中対立下でうまく立ち回ったと言われるインドだが、人権を重視する米新政権は「CAA」「カシミール」に強い懸念を示すだろう。

 実利外交を推進していく上では、対中関係の改善にも取り組まねばならない。2014年以来、首脳会議が途絶えている「南アジア地域協力連合(SAARC)」を再起動させるには、隣国パキスタンとの交渉再開も不可欠だ。

 

【インドネシア:川村晃一】未だ収まらない新型コロナの感染拡大

 20201年の課題はとにもかくにも、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えることができるかどうか、である。

 インドネシアでは、2020年3月2日に最初の感染者が確認されて以降、感染拡大のペースが1度も収まらないまま年末を迎えた。12月中旬までの累計感染者数は約62万人、死者数も約1万8000人に達しており、東南アジアではフィリピンと並んで深刻な状況である。

 これに対して経済情勢は、都市封鎖などの厳しい対策を取らなかったこともあり、ベトナムを除く他の東南アジア諸国ほどは悪化しておらず、2020年の経済成長率はマイナス1~2%程度になると見込まれる。

 ジョコ・ウィドド政権は、10月に労働団体や市民団体の強い反対を押し切って成立させた包括的な投資促進政策、「雇用創出法」の効果も期待し、2021年には5%前後の成長にV字回復すると楽観的な見通しを示している。

 しかし、経済活動の再開も投資の誘致も、新型コロナの感染拡大を抑止できるかどうかにかかっている。

 

【中国・台湾:野嶋剛】台湾と香港の「生存の道」

 2020年は台湾の蔡英文・民進党政権にとって明るい1年だったと言えるだろう。1月の選挙で圧勝した勢いで新型コロナ対策では完璧な対応を見せ、支持率も急上昇した。

 しかし、夏以降、中国軍機による空域侵犯が繰り返された。中国は武力行使をにおわせながら、台湾社会に強烈なプレッシャーを与え続けている。

 頼みの綱の米国も、親台的だったドナルド・トランプ政権に比べ、バランス重視とみられるジョー・バイデン政権になる。米中角逐の間に立つ台湾の生存の道がどこにあるのか、2021年は再び悩まされる1年になりそうだ。

 一方、2020年6月末の国家安全維持法導入以後、香港を覆っている重苦しさは、2021年も続くだろう。延期された立法会選挙が9月に予定されているが、民主派の候補は様々な難癖を付けられる恐れが強く、出馬自体が容易ではない。

 民主活動家のアグネス・チョウ(周庭)や民主派を支えてきたメディア人ジミーライ(黎智英)の逮捕で示されたように、国安法などを用いた香港民主派への圧力はさらに強まるだろう。

 「司法の独立」「言論・報道の自由」「民主と選挙」という香港が誇ってきた中国本土にはない価値観が、急速に削られていく。「一国二制度」の堅持を中国に求める声が国際社会にどれだけ共有されるかを見守りたい。

 

【タイ:樋泉克夫】揺れる「王国としてのタイ」の根幹

 2021年のタイは、前年から持ち越された新型コロナ禍、憲法改正、王室改革のどれもが「王国としてのタイ」の根幹に関わる難問だけに、国内的には不安定含みで推移するだろう。

 タイが進める高速鉄道を軸にした全国規模のインフラ構想が「一帯一路」に重なることから、中国の影響力拡大は避けられそうにない。

 米新政権が失地回復を狙いタイへの関与を強めるなら、米中両大国間の外交的軋轢に振り回されかねず、国内不安を不用意に刺激することも考えられる。両大国に対するタイ得意の外交力に注目したい。

 周辺諸国も米中対立の余波を避けつつ、新型コロナ禍が引き起こした経済不振と社会不安への対応に腐心するはずだ。一致して域外大国に対処できるのか、ASEANの存在意義が問われる。

 

【朝鮮半島:平井久志】コロナ禍での北「対米」「経済」南「次期大統領」

 1月初めに朝鮮労働党第8回党大会が開かれ、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は、対米政策を含めた新たな外交路線を示す見通し。「国家経済発展5カ年計画」や党組織の改編や人事も決定する。1月下旬には最高人民会議を開き、国家機関の人事などを決める。米国のバイデン政権の発足に伴い、軍事挑発を含め、いかなる対応を取るかが注目点。

 韓国では、4月にソウル、釜山の市長選挙が行われる。その結果は2022年3月の大統領選挙に影響を与える。与野党の大統領候補決定に向けた動きが活発化し、年末ごろには進歩、保守両陣営の候補決定か。

 新型コロナウイルスへの対応が、北朝鮮では経済に深刻な影響を与え、韓国では経済に加え、次期大統領候補選びにも影響を与えそうだ。

中東

【イラン:西川恵】イランへの逆風は強まるか

 2021年、国際社会のイランへの評価はどうなるだろう。2つあると思う。1つは、国際社会と協調し、核合意を守る責任ある国。他方は、イスラム革命を輸出し、国際社会の攪乱要因となる国。バイデン米政権の対イラン姿勢にもよるが、個人的には後者のイメージが強まり、イランへの逆風が大きくなると見る。

 イランの革命組織はシリア、レバノン、イエメン、イラクなどでシーア派組織を武装化し、イスラエルやサウジアラビア、イラク駐留米軍を攻撃してきた。これまで国際社会はイランに寛容だったが、イスラエルがアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン、モロッコと国交を樹立し、イスラエルとアラブ諸国の連携による対イラン包囲網が構築されつつある。さらにイラン国内で強硬派が台頭しており、「革命の輸出を図るイラン」のイメージは米欧でも強まらざるを得ない。いずれイランは中東各地の革命組織を引き上げざるを得ない時がくるのではないか。

 

【トルコ:間寧】「ポスト・エルドアン」と「エルドアノミックス」の行方

 トルコではトルコリラ相場が急落する中、2020年11月8日にレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領の娘婿で後継者と見なされていたベラト・アルバイラク財務相が辞任した。彼の兄は親政権的なメディアグループの経営者で、親政権の世論形成の役割を果たしていた。エルドアンは今後、新たな後継者候補を模索するのか、また親政権メディアを再編するのか。   

 エルドアン大統領はアルバイラク辞任直後に「経済・法制度改革」を宣言し、中央銀行に政策金利引き上げを許容した。トルコリラ相場は反発、一時的安定を取り戻したが、その後、改革の具体的な内容は明らかにされていない。

 しかも彼は依然として、インフレを下げるためには金利を下げるべきとの「エルドアノミックス」を説いている。エルドアンはこの過ちにいつ気がつくのだろうか。

 

【イスラエル:平野雄吾】バイデン米政権を警戒するイスラエル

 親イスラエル、反イランの政策を貫いたドナルド・トランプ米大統領の退陣で、イスラエル政府の関心はバイデン次期米政権の対イラン政策にシフトした。警戒するのはジョー・バイデン氏が条件付きで復帰の意思を示すイラン核合意の行方だ。

 イスラエルは、「核開発の制限期間が限定されているなど現状の核合意には欠陥があり、イランの核開発を阻止できない」と批判。国土の狭いイスラエルにとって敵対するイランの核兵器保有は「生存に関わる危機」(モーシェ・ヤアロン元国防相)で、イランの脅威を共有する湾岸アラブ諸国と共に、核合意復帰阻止に向け、米国に働き掛けるとみられている。米イラン関係の変化がイスラエルの安全保障に与える影響は大きく、バイデン政権が具体的にどのような対イラン政策を進めるかに注目が集まっている。

北米

【アメリカ:足立正彦】バイデン政権「ねじれ議会」党内左派「突き上げ」乗り切れるか

 歯止めがかからない新型コロナの感染拡大、米国経済低迷という米国史上未曾有の危機の中でジョー・バイデン政権は始動する。

 党派対立も激化する中、第117議会では与党・民主党が上院で引き続き少数党の可能性が高い。1989年のジョージ・H.W.ブッシュ41代大統領以来32年ぶりに、民主党大統領としては1885年のグローバー・クリーブランド大統領以来136年ぶりに「ねじれ」の中での政権の船出となる。

 上院議員36年間、副大統領8年間に培った、ミッチ・マコネル共和党上院院内総務らとの関係に期待する見方もある。

 だが、ドナルド・トランプ大統領の影響力が増大した共和党は、バイデン氏がかつて対応していた同党とは変質している。また、民主党左派の突き上げも制約要因となり、厳しい政権運営を強いられよう。

 

【アメリカ:渡部恒雄】バイデン政権は機能するか

 2021年からの米国民の「バイデン政権選択」が吉とでるか凶とでるか?

 ジョー・バイデン次期政権は、米国を国際協調的にする姿勢はみせるだろう。しかし、ドナルド・トランプ大統領の「アメリカ・ファースト」を支援する7400万人の投票者と、上下院で議席を増やした共和党議会という「抵抗勢力」がおり、民主党内にも内向きの左派を抱えている。

 12月中旬に始まったワクチン接種でコロナ感染を止め、議会で難航している景気対策に合意をして、国内の支持を増やすことが最初の試練だろう。

 日本にとっては、トランプ政権よりも「理性的」になると目される対中政策が、中国の「戦狼外交」と「軍事冒険主義」を抑止して国際ルール尊重に誘導できるのか、そして対中経済安保政策の行方も気になる。

 

中南米

【中南米:遅野井茂雄】「バイデン政権」は連携を再興できるか

 世界大恐慌の再来を予感させたコロナ危機であったが、社会不安が高まる中でも各国の民主政治は予想以上の耐性を示した。政府の政策対応力によるものだが、再拡大の波に耐え得るかは予断できない。

 中南米諸国では政党制度の劣化が進んでおり、ミレニアル世代などを中心にSNSを介した街頭での抗議デモが帰趨を決する場面が増えそうだ。

 ベネズエラでは12月6日の議会選挙の結果、1月5日にはニコラス・マドゥロ政権側の翼賛的な新議会が発足し、フアン・グアイド暫定政権は存立基盤を失うが、米国をはじめ欧州連合(EU)やリマグループは、新議会を認めない立場を貫くだろう。

 また、2021年は米州民主憲章が採択されて20年の節目だが、コロナ禍にあって国際協調への回帰を謳うジョー・バイデン次期米政権の中南米への対応が注目される。米国開催となる米州首脳会議がその試金石となる。民主主義を軸とする連携の再興による米国の指導力の真価が問われる。

 

【キューバ:渡邉優】キューバは体制の転機を迎えるか?

 2020年のキューバは米政権による制裁強化やコロナ禍による経済苦境、物資の不足により、国民生活は更なる窮状に陥った。2021年も楽観できる要素は少ない。

 4月には共産党大会が開かれ、89歳のラウル・カストロからミゲル・ディアスカネル大統領に党第1書記の座が禅譲される見通しだが、経済改革の必要性と改革を嫌う党・軍内保守派の板挟みにあって、舵取りは容易でない。

 経済を歪める二重通貨制度が1月1日に廃止されると発表された。必要な措置ではあるが、経済危機下で実施すればインフレや国有企業の破綻に繋がりかねない。

 体制への不満は充満している。国民の最低限の生活レベルを維持できなくなれば、かつてのように多くの国民が国を捨てるか、60年間続いた共産主義体制の転機がいよいよ近づくかもしれない。

ヨーロッパ

【スペイン:大野ゆり子】勢いを増すか「カタルーニャ独立問題」

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない欧州で、2020年はニュースにならなかったスペイン・カタルーニャ独立問題。未曾有の緊急事態を前に、カタルーニャ独立派とスペイン中央政府の間では一旦、独立問題を棚上げする形で妥協が図られているように見える。

 2018年6月の就任以来、予算を成立させられなかったペドロ・サンチェス首相は、金融危機時を大幅に上回る「歴史的規模」の予算案を、カタルーニャ独立派政党の賛成を得て3年ぶりに下院で通過させた。こうした協力をいわば中央政府への「貸し」ととらえる独立派は、コロナ禍が収束すれば、いっそう発言力を強めるだろう。コロナ禍で覆い隠されていた独立問題は、噴き出すマグマのように、2021年にいっそう勢いを増す可能性がある。

 

【イギリス:国末憲人】英国分裂とドイツの行く末

 想定外のコロナ禍を別にすると、2020年欧州最大の課題だった英国のEU(欧州連合)離脱は、両者が12月24日、FTA(自由貿易協定)交渉で合意に達した。ただ、この問題への欧州大陸の関心は急速に薄れ、次第に英国ローカルの課題となりつつある。

 英国では2021年5月、スコットランド自治議会選が予定されており、独立を掲げるスコットランド国民党の大勝が予想される。結果次第では再度の住民投票への流れがつくられ、英国分裂が一気に現実味を帯びるかもしれない。

 もっとも、2021年欧州政治の話題を牽引するのはむしろ、ドイツの行く末だろう。引退を表明しているアンゲラ・メルケル首相の後継を誰が担うか。新首相は欧州各国の手綱をしっかり締められるか。フランスのエマニュエル・マクロン大統領との関係はどうなるか。

 ドイツの揺らぎは、欧州の緩みに直結する。欧州の基本理念を踏み外しがちなハンガリーのオルバン・ヴィクトル首相やポーランドの「法と正義」政権を何とかつなぎとめられたのも、両国の経済を握るドイツが重石となったからだ。ただ、誰が後継になっても、メルケル氏ほどの安定感は望めまい。それは、欧州の将来に漂う不安にもつながっている。

 

【ドイツ:熊谷徹】ポスト・メルケルは誰か

 EU(欧州連合)最大の経済パワー・ドイツの政局は2021年に大きな区切りを迎える。15年前から権力の座にあるアンゲラ・メルケル首相が引退するのだ。欧州で彼女ほど豊富な経験を持つ首脳は1人もいない。リーマンショック、ユーロ危機、ウクライナ危機、パンデミックなど、様々な危機に対処してきたベテラン政治家の引退は、欧州全体にとっても損失だ。メルケル首相の後継者は誰になるのか。欧州政局の最大の焦点である。

 ドイツでは気候変動に対する市民の危機感が強い。今年9月26日の連邦議会選挙では、環境政党「緑の党」が「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」と連立し、政権入りする可能性が強い。経済の非炭素化に拍車がかかることは確実だ。

 

【ヨーロッパ:軍司泰史】メルケル後の欧州と世界のゆくえ

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相が2021年秋に退陣する。メルケル首相は良くも悪くもこの15年、欧州連合(EU)を牽引してきた。

 EUの両輪とされるのはドイツとフランスだが、2010年代の欧州債務危機、15年の難民危機、20年のコロナ危機などに際して、実際にはドイツが常にフランスをリードしていた。ドイツ主導で厳しい財政規律を押し付けられた南欧諸国からは怨嗟の声が上がり、ドイツが16年に世界最大の経常黒字国となった際は独り勝ちを非難されもしたが、危機に直面した際、旧東ドイツ出身の自らの経験に基づくメルケル氏の言葉と存在感は際立っていた。米誌『フォーブス』の「世界で最もパワフルな女性」でも、10年連続でトップに選ばれている。メルケル首相を誰が継ぐのか、そしてメルケル後の欧州と世界がどの方向に進むのかに注目している。

 

【ロシア:古葉祥太】波乱含みのロシア内政

 ロシア政局を注視したい。憲法改正を巡っては、2024年に任期満了を迎えるウラジーミル・プーチン大統領の続投を可能にしたことに注目が集まったが、元大統領の不逮捕特権を保障したり、プーチン政権下で暗躍した情報機関員の外国国籍取得を認めたりする関連法案も追加された。これらは大統領退任をにらんだ動きとの見方がある。

 プーチン大統領の健康不安説も浮上しており、政権移行に向けて2021年9月に予定されている議会選を前倒しで実施するとの臆測も絶えない。コロナ禍により、地方の医療崩壊が伝えられ、経済苦境も深まっており、政権の求心力は衰えかねない。アメリカで対ロ強硬派とされるバイデン政権が誕生することも相まって、ロシア内政は波乱含みだ。

 

【ロシア:名越健郎】プーチン長期政権が対峙する「反露」米新政権

 新型コロナウイルス感染者が世界ワースト4位のロシアは、経済苦境や閉塞感が重なり、社会に沈滞ムードが広がる。政権担当21年のウラジーミル・プーチン大統領は2020年、任期がまだ4年近くあるのに、コロナ禍で憲法改正を急いだ。後継体制固めを急いでいるとの憶測も出ている。9月の下院選は2024年大統領選の前哨戦の意味合いがあり、下院選に向けて緊張が高まるだろう。

 1月20日に就任するジョー・バイデン次期大統領は発言や経歴から見て反露のようだ。同盟国を結集してロシアに対抗するとしており、ロシア側に警戒感が強まる。ただ、バイデン氏はロシアとの軍備管理は進めるとしており、当面2月5日で失効する新戦略兵器削減条約(新START)の取り扱いが焦点となる。延長で合意できれば、対話のパイプが築かれる。

 

【ジョージア:前田弘毅】不透明なコーカサス情勢下での「安定」

 歴史的にアジアとヨーロッパの交差点となってきたユーラシアの「ハブ国家」であるジョージアの2021年の課題は、「安定」と「成長」であろう。

 2020年10月末に行われた総選挙で、与党「ジョージアの夢」が勝利し、国民は「安定」を選択した形となった。ナゴルノ・カラバフの戦争が一応の講和をみたこと、米大統領選でジョー・バイデン候補が勝利したことは、安定への追い風となる。

 一方で、ナゴルノ・カラバフへのロシアの直接関与の開始、アゼルバイジャン側の軍事的勝利によるトルコの威信の増大、ヨーロッパの関与の限界は、コーカサス情勢の先行きをますます不透明なものとしつつある。すなわち、ジョージアを巡る国際環境はより厳しさを増している。

 コロナ禍も深刻であり、観光立国を掲げるジョージアにとって難しい局面が当面は続くだろう。暗礁に乗り上げている黒海に面したアナクリア港湾開発の行方も気になるところである。

 

【欧州各国:渡邊啓貴】5つのポイント

 第1に、新型コロナウイルス感染の鎮静化が欧州各国共通の最大の課題だ。春ごろまでには、ワクチンの目途が立つだろう。

 EU(欧州連合)全体としては財政危機の議論が大きくなるが、他方で、たとえばコロナ復興基金など将来の共通予算・財政政策に向かう議論も積極的になるだろう。

 第2に、ブレグジットの行方である。昨年末段階では合意の可能性大という見通しなので、「合意ある離脱」になるとすると、今後のイギリスの在り方が問われる1年となるだろう。

 大方の予測は、当面一両年イギリス経済は低迷すると見込まれているし、EU自身もその影響を受ける。またブレグジットの成否がイタリアなど独仏主導のEU統合に不満を持つ国に影響を及ぼす。EU統合の求心力が問われるだろう。

 第3に、バイデン米新政権との関係だが、米政権の対欧州政策は大きく変わらないとみられるし、独仏を中心とする「戦略的自立」の路線は引き続き目標とされるだろう。

 第4に、秋のドイツ総選挙。「ポスト・メルケル」の新政権誕生は秋なので、ドイツ政治は春からは大きく動かないだろう。

 また秋ごろからは2022年フランス大統領選挙戦が本格化するので、フランス政治はストップするだろう。マリーヌ・ルペン率いる極右政党の動きが注目され、保守派の復権が問われる。ただ、EU統合に新しい動きは少ないだろう。

 第5に、コロナ禍が終息するのに応じて、難民・移民・テロ問題への関心が再燃するであろう。

 

アフリカ

【アフリカ:白戸圭一】新型コロナによる「経済被害」

 新型コロナの感染が世界規模で拡大し始めた当初、貧困層が多く医療水準の低いアフリカにおける感染爆発が懸念されたが、総人口に占める若年層の割合が大きいため、「健康被害」は当初予想されたものほど深刻にはなっていない。

 むしろ「経済被害」の色彩が強い。「国際通貨基金」は、2020年にはマイナス成長に終わる見通しのサハラ以南アフリカのGDP成長率は、21年には3.1%にまで回復すると予測している。

 しかし、世界経済全体が大きく落ち込む中、アフリカ向け直接投資や在外アフリカ人同胞による送金が減ることは確実だろう。また、コロナ感染で税収減と歳出増に直面している国が多く、「世界銀行」によれば、2019年に58.5%だったサハラ以南アフリカの公的債務の対GDP比は、20年63.1%、21年67.4%と悪化傾向にある。

 債務リスクの高い国として挙げられるエチオピア、カメルーン、ガーナ、ケニア、モザンビーク等の動向に注目したい。

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