米中冷戦が引き起こしたミャンマークーデター

東南アジアで強権ドミノの懸念

執筆者:後藤康浩 2021年2月3日
カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
エリア: アジア

ミャンマーは中国にとってインド洋への出口。地政学上の存在感は大きい(C)AFP=時事

 

 ミャンマーで2月1日朝、国軍が起こしたアウンサンスーチー政権打倒のクーデターは単なる軍政への“先祖返り”とみるべきではない。軍政が世界からの批判、制裁を恐れずに強権的な行動に出たのは、米中冷戦が深刻化するなかで、中国陣営に加われば軍政国家でも十分生き残れるという判断があるからだ。米欧日などの制裁を受け、貿易や投資を絶たれても、中国主導の「一帯一路」沿線国家として成長できるとの読みだ。逆にミャンマー国軍の動きこそ、米中冷戦が東南アジアに構造として定着し始めたことを映し出している。タイのプラユット軍政などミャンマーに続き、中国陣営に踏み込む国が出てくる可能性は高い。アジアで「民主主義否定のドミノ」が始まった。

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執筆者プロフィール
後藤康浩(ごとうやすひろ) 亜細亜大学都市創造学部教授、元日本経済新聞論説委員・編集委員。 1958年福岡県生まれ。早稲田大政経学部卒、豪ボンド大MBA修了。1984年日経新聞入社。社会部、国際部、バーレーン支局、欧州総局(ロンドン)駐在、東京本社産業部、中国総局(北京)駐在などを経て、産業部編集委員、論説委員、アジア部長、編集委員などを歴任。2016年4月から現職。産業政策、モノづくり、アジア経済、資源エネルギー問題などを専門とし、大学で教鞭を執る傍ら、テレビ東京系列『未来世紀ジパング』などにも出演していた。現在も幅広いメディアで講演や執筆活動を行うほか、企業の社外取締役なども務めている。著書に『アジア都市の成長戦略』(2018年度「岡倉天心記念賞」受賞/慶應義塾大学出版会)、『ネクスト・アジア』(日本経済新聞出版)、『資源・食糧・エネルギーが変える世界』(日本経済新聞出版)、『アジア力』(日本経済新聞出版)、『強い工場』(日経BP)、『勝つ工場』(日本経済新聞出版)などがある。
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