裂けた明日
裂けた明日 (4)

連載小説:裂けた明日 第4回

執筆者:佐々木譲 2021年5月22日
タグ: 日本
写真提供:EPA=時事
内戦により、分断された日本。相次ぐ震災と原発事故、そして例の病気の蔓延で、国民の生活は壊滅的な影響を受けていた。家族を亡くし一人暮らす男の元へ、逃亡者が現れる――。<作家の眼が、現実を鋭く照射する。近未来の分断日本を描く、スリリングなSF長篇>

追っ手から逃れるために、軍事境界線を越えたいと言う真智。内戦後の日本は、あまりに複雑な状況に陥っていた。

[承前]

 真智が答えた。

「越えることができれば、東京を目指すつもりです。知り合いも多いし、なんとか東京でなら、生きて行けます」

「東京か」

 東京は、あの戦争のあと、占領する平和維持軍の統治下にある。国民融和政府も東京に置かれているが、その統治権は、東京を除外されていた。

 平和維持軍の統治下にあるが、東京が完全に平和で安全な都市になっているわけではない。外国軍の占領と、国民融和政府を受け入れない日本人によって、抵抗活動が続けられている。盛岡政府と同じく、外国軍の即時撤退と完全独立が、抵抗活動側の要求であり主張だ。東京の住人の一部は、これを支持している。

カテゴリ: カルチャー
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執筆者プロフィール
佐々木譲 [ささき・じょう] 1950(昭和25)年、北海道生れ。1979年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞。1990(平成2)年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞を受賞。2010年、『廃墟に乞う』で直木賞を受賞する。著書に『ベルリン飛行指令』『天下城』『笑う警官』『警官の血』『地層捜査』『沈黙法廷』『抵抗都市』『図書館の子』『降るがいい』『雪に撃つ』『帝国の弔砲』などがある。
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