中国の「安保ただ乗り」時代の終焉――超大国への分岐点

7月14日、自爆テロによって爆破され、崖下に転落したバス。中国人技術者10人を含む14人が死亡した (C)AFP=時事
米軍のアフガン撤退、「タリバン」による政権掌握――これは、新たな地域秩序構築を目指す中国にとっては願ったりの状況に見える。ただし、米軍が存在したからこそ中国の伸長が可能だった側面も見逃せない。このパラドックスが消えた今、中国に突き付けられる現実とは。

 アフガニスタンでの20年にわたる米国の戦争が終わり「タリバン」が全土を制圧した。米軍という「安定の担保」が去った今、アフガニスタンを中心とするこの地域で地殻変動の予兆が表れている。米国の安全保障秩序に「ただ乗り」して「一帯一路」構想を進めてきた中国は今、地域秩序を担う初の試練に向かうのだが、その本音は怯えであろう。

パキスタン史上最悪の対中テロが発生

 アフガニスタンでの「タリバン」進撃に世界が目を奪われていた7月14日、パキスタン北部で不吉なテロが起きた。イスラマバードから北方160キロにあるコヒスタン地方のダスで、2台のバスに対する自爆テロが発生。中国人技術者10人を含む14人が殺害され、他に41人が負傷した。車体故障による事故説も流れたが、シャー・マヘムード・クレーシ・パキスタン外相は8月12日になり、自爆テロだったと発表した。

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執筆者プロフィール
杉田弘毅(すぎたひろき) 共同通信社特別編集委員。1957年生まれ。一橋大学法学部を卒業後、共同通信社に入社。テヘラン支局長、ワシントン特派員、ワシントン支局長、編集委員室長、論説委員長などを経て現職。安倍ジャーナリスト・フェローシップ選考委員、東京-北京フォーラム実行委員、明治大学特任教授なども務める。多彩な言論活動で国際報道の質を高めてきたとして、2021年度日本記者クラブ賞を受賞。2021年、国際新聞編集者協会理事に就任。著書に『検証 非核の選択』(岩波書店)、『アメリカはなぜ変われるのか』(ちくま新書)、『入門 トランプ政権』(共同通信社)、『「ポスト・グローバル時代」の地政学』(新潮選書)、『アメリカの制裁外交』(岩波新書)など。
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