
写真提供:AFP=時事
緊急の場合のため、信也たちは念入りに再集合場所を下見する。日本の現状を象徴するような街の様子が、三人の目に映る。
[承前]
信也たちは昭和通りに近いファーストフードの店で昼食を取ったあと、またJR秋葉原駅に入って、内回りの山手線に乗った。繁華街ではない共同統治地域の様子を窓から見るためだった。
やってきた電車は、けっこう混んでいた。これも間引き運転のせいだろう。街に活気があるせいではないようだった。
信也たちは先頭車両に乗り、いちばん前のドアに近い場所に立って、無言のまま窓の外の東京の風景を見つめた。上野駅を出ると、町並はどこもくすんでいる印象だった。本来なら広告やら看板だらけのはずの駅前も、空いた広告枠や看板跡だけが目立ってずいぶんと寒々としている。

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