中国の大艦隊はどこに向かうのか――「マラッカ・ディレンマ」をめぐる戦い

執筆者:後瀉桂太郎 2022年9月20日
21年4月、中国・海南島で行われた初の強襲揚陸艦の就役式に出席した習近平国家主席 ©時事
中国海軍の発展はこれまで、米軍の太平洋を越えた戦力投射を拒否する「領域拒否」という文脈に基づいて分析されてきた。しかし、中国における近年の建艦ラッシュの背景には、むしろ自国による「制海」と「戦力投射」を重視する戦略がある。その戦略を紐解く鍵が、グローバル化する中国経済のチョークポイント「マラッカ海峡」である。

 

大型水上艦艇の就役数が急増

 近年、中国人民解放軍(PLA)海軍(中国海軍)は空母やミサイル駆逐艦といった大型水上戦闘艦艇を多数建造している。2022年8月、日経新聞は環球時報など中国メディアの情報として、中国東北部大連の造船所において、5隻もの大型ミサイル駆逐艦(「052D型」もしくはこの改良型)が同時に建造中であると報じている。これは「中華イージス」とも呼ばれ、フェーズドアレイ多機能レーダーと垂直発射システム、そしてこれらを制御する先進的な戦闘指揮システムなどから構成され、高い防空能力を有する「ルーヤン(旅洋)級」ミサイル駆逐艦をさす。また、空母については現在「リャオニン(遼寧)」、「シャンドン(山東)」の2隻を運用しているが、本年6月、3隻目の「フージャン(福建)」が進水しており、これは電磁カタパルトを装備する予定である、とされている。このように近年の中国海軍は外洋で多様な任務を遂行できる「ブルー・ウォーター・ネイビー」(blue-water-navy)へと急速に変貌しつつあるが、こうした傾向は主要艦艇の就役状況を観察すると明らかになる。

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カテゴリ: 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
後瀉桂太郎(うしろがたけいたろう) 海上自衛隊幹部学校 主任研究開発官 1等海佐。 練習艦隊司令部、護衛艦みねゆき航海長、護衛艦あたご航海長、海上自衛隊幹部学校研究部員、防衛省海上幕僚監部防衛課勤務(内閣府 総合海洋政策推進事務局出向)などを経て2020年5月より現職。 1997年防衛大学校国際関係学科卒業、2017年政策研究大学院大学 安全保障・国際問題プログラム博士課程修了、博士(国際関係論)。2018年オーストラリア海軍シーパワーセンター/ニューサウスウェールズ大学キャンベラ校客員研究員。著書に『海洋戦略論 大国は海でどのように戦うのか』(勁草書房、2019年)がある。
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