国務院での経験不足がどう転ぶかは未知数[北京の人民大会堂で記者会見に臨む李強首相=2023年3月13日](C)時事
2023年の全国人民代表大会(全人代)が3月13日に閉幕した。昨秋の党大会での共産党高官に続き、閣僚など政府機関の新人事が決まったことで、党と国家の双方で第3期習近平体制が正式にスタートしたことになる。
新たな船出は多くの課題と不安に直面している。その不安の一つに、舵取りを任された指導陣の資質が挙げられる。そこで本稿では李強新首相にフォーカスすることで、第3期習近平体制の現状と課題を読み解いていきたい。
習近平と出会うまでは「叩き上げそのもの」
昨年10月の中国共産党第20回全国代表大会で、第3期習近平体制を支える党幹部の人事が確定した。サプライズとなったのが、最高指導陣である中央政治局常務委員の顔ぶれだ。年齢的には常務委員として留任可能だった李克強前首相の引退が決まったばかりか、有力候補とみなされていた胡春華は常務委員入りを果たせぬどころか降格した。もう一人の候補である汪洋も定年前の引退が決まった。
「清一色的習家軍」(習近平派閥で一色だ、清一色=チンイツは麻雀の役の一つ。中国語では一色に塗りつぶされた、一つの勢力に占拠されたとの意でも使われる)と驚きの声が上がった。
習近平色の強い人事になることは予想されていたとはいえ、実質的なナンバー2である首相は前述の胡春華か汪洋のいずれかになるだろうと見られていた。というのも、初代首相の周恩来を除き、歴代首相はいずれも副首相としてのキャリアを持っていた。いきなり首相に任命されても、巨大官僚組織である国務院(中央省庁に相当)は掌握できない。副首相という地位で修行する期間が必要となる。それゆえに「首相候補の前提は副首相としてのキャリアを持つこと」という慣例は守られると予測されていたわけだ。
この人事には、国家運営や経済の安定よりも政権の安定を優先したのではないかとの失望も広がった。ただ、現代中国政治を専門とする李昊(り・こう)神戸大学大学院国際文化学研究科講師、日本国際問題研究所研究員は以下のように指摘する。……

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