Weekly北朝鮮『労働新聞』 (13)

1カ月ぶりの動静報道は「衛星」と「1周忌」(2023年5月14日~5月20日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年5月22日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
玄哲海人民軍元帥の墓前に花を手向ける、金正恩総書記(『わが民族同士』HPより)
軍事偵察衛星が間もなく打ち上げられるものと考えられる。玄哲海朝鮮人民軍元帥の1周忌に関する報道は別格とも言える異例の扱い。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 5月17日付で、金正恩(キム・ジョンウン)総書記の動静報道が1カ月ぶりに見られた。「偵察衛星発射準備委員会の事業」を現地指導し、「米帝と南朝鮮傀儡悪党どもの反共和国対決策動が悪辣に加重されるほど、これを徹底的に抑制して国家を守護するためのわれわれの主権と正当防衛権はさらに堂々と、より攻勢的に行使される」と述べたことを報じたのである。「搭載準備が完了した軍事偵察衛星の1号機をご覧になった」との表現から、間もなく打ち上げられるものと考えらえる。なお、複数の写真から、今回も娘を同行させたことが判明しているが、活字では「お嬢さま」に言及していない。

 18日付の1面下段では、金徳訓(キム・ドックン)内閣総理が中国の王亜軍駐朝大使と万寿台(マンスデ)議事堂で面会したことが写真入りで報じられた。王大使については、崔善姫(チェ・ソニ)外相が面会したことを9日付が写真入りで報じていた。核実験の強行で中朝関係が冷却化していた2017年までとは打って変わっての蜜月ぶりである。

『労働新聞』の報道ぶりとしてきわめて珍しかったのは、20日付である。玄哲海(ヒョン・チョレ)朝鮮人民軍元帥の1周忌に際して、金正恩氏が墓所に花束を捧げた様子が1面から2面の上段にかけて大きく報じられた。……

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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