「デカップリング」から「デリスク」へ――「バイデン対中経済政策」の一大転機?
Foresight World Watcher's 3Tips

中国をロシアから引き離しつつ台湾併合を阻止し、経済関係を深めるという難題が待ち受ける(C)AFP=時事
今週もお疲れ様でした。ジェイク・サリバン米大統領補佐官が中国との経済関係について、「デカップリング(切り離し)」ではなく「デリスク(脱リスク)」が重要であると発言したことを受けて、FP誌がバイデン政権の対中政策を論じています。
フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事3本、皆様もよろしければご一緒に。
Is the Biden Administration Going Soft on China?【Danielle Pletka/Foreign Policy/5月25日付】
「核の近代化からチキンナゲットまで、あらゆるテーマで対立が起きるワシントンにおいて、中国に対抗する必要性については、党派を超えた合意が成り立ってきた。しかし、中国に関する超党派の協力は、政治面、イデオロギー面、そして経済面において揺らぎ、終わりつつある。そして最大の受益者となるのは? 中華人民共和国だ」
「ジェイク・サリバン米国家安全保障顧問は最近の講演で新たな方針を発表し、こう説明した。『私たちは、デカップリングではなく、デリスクとダイバーシフィケーションへと向かっています』。言い換えれば、[ジョー・]バイデン政権では、少なくとも名目上は、まず北京との経済関係を深めることへと[中略]関心が移っていくのだ」
これは米「フォーリン・ポリシー(FP)」誌サイトに5月25日付で登場した「バイデン政権は中国に対して軟化するのか?」からの引用だ。これまで続けてきた対中政策の基本であるデカップリング(切り離し)から、デリスク(脱リスク)とダイバーシフィケーション(多様化)へと舵を切るのであれば、米国の対中政策は一大転換を迎えることになる。
筆者であるアメリカン・エンタープライズ研究所上席研究員のダニエル・プレトゥカによれば、米政権の中国政策は政権ごとに次のように変遷してきた。
●経済・軍事大国化する中国に対して寛容だったバラク・オバマ政権
●オバマ政権への反発や中国の台湾統一への危機感からデカップリングが唱えられたドナルド・トランプ政権
●トランプによる外交・安全保障政策の大幅な転換を見直したものの、対中政策は引き継いだバイデン政権
「しかし今、バイデン・チームはスパイ風船騒動を『超えて』、北京との緊張の『スパイラル』を止めようと見直しを進めている。中国とのリセットの必要性――および、そのあり方――について政権内部で議論が続いているという。[中略]たとえば、木曜日[5月25日]にはジーナ・レモンド米商務長官が中国の王文濤商務部長と会談し、バイデン政権下で初めてワシントンで両国の閣僚級会談を行う予定だ」
バイデン政権が対中政策の「リセット」に動いている証拠は次のようなものだという。……

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