マンション価格高騰 ただし、「不動産バブル」当時とは理由もリスク要因もかなり違う

現在、都心の不動産価格は上昇を続け、特に東京23区のマンション平均価格(2022年度)は、9899万円と1億円の大台が見えてきた。あまりの過熱ぶりに、1990年初期の不動産バブルの崩壊を心配されている人も多いだろう。ここでは、かつての不動産バブルと、現在の不動産の状況を比較し、今後の不動産マーケットについて考えてみたい。
不動産バブルとは何だったのか
不動産バブルとは、一般的に不動産が説明のつかないほどに上がり続けることで、泡が膨らむ状態に似ていることから「バブル」と呼ばれる。
日本における不動産バブルは、1980年代後半から1990年初期にかけて起きた。きっかけは日本銀行の公定歩合の引き下げと言われている。
公定歩合とは、日銀が民間の金融機関にお金を貸し出す時の金利のことだ。日銀は、バブル前は5%だった公定歩合を段階的に2.5%まで引き下げた。当時は各種の金利が公定歩合に連動する規制金利時代であり、公定歩合が下がれば、金融機関が企業や個人へ融資を行う際の貸出金利も低下した。
借り入れる側からすると、今までの支払金利額でより多くのお金が借りられるため、より高額な不動産を買いやすくなる。企業や個人は、銀行からお金を借り入れて、土地や株式をどんどん購入した。
当時は、日本の人口も増加を続け、「土地の価格は絶対に下がらず上がり続ける」という土地神話を多くの人が信じ、不動産を購入し続けた。購入したいと思う人が増えるほど、不動産の価値が上がる。結果的に地価が高騰し続け、バブル経済に拍車をかけた。
不動産バブルはどのようにして終わったのか
では、どのようにして不動産バブルははじけてしまったのか。
主な要因は3つあると言われている。
① 日銀の金融引き締め
日銀は公定歩合を1989年5月から段階的に引き上げ始め、1990年8月にはプラザ合意後の最高の水準である6%に引き上げたことで、借入に頼っていた不動産購入者の支払可能額が一気に下がり、不動産価格を直撃した。
② 総量規制
総量規制が発表されたのは1990年3月。旧大蔵省は金融機関に対し不動産向け融資の伸び率抑制抑を求め、金融機関は一斉にこれに従った。それまで無制限に融資を受けて不動産を購入していた企業や個人の不動産購入に急ブレーキがかかった。
③ 地価税の導入
3つ目は、地価税の導入だ。地価税とは、国内にある土地等を所有する人に課税される税金で、多くの土地を所有していた企業や個人に影響を及ぼした。
結果として、不動産取引は一転して停滞し、値が下がり、1990年には地価や株価が暴落し、バブル経済は崩壊する。バブル経済崩壊後は、「失われた10年(or 20年)」とも呼ばれ、銀行は不良債権に苦しみ、景気は低迷し、物価は下がり続けるデフレスパイラルとなった。
バブル時と今の比較
不動産の過熱感が叫ばれる昨今だが、バブル期と今の土地価格とマンション価格について、それぞれ見ていきたい。……

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