次にウクライナで何が起きるか

Foresight World Watcher's 4Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年2月24日
エリア: アジア ヨーロッパ
戦争で命を落とした兵士の墓地に「記憶の光線」と名付けられたイルミネーションが捧げられた[2024年2月23日、ウクライナ・リヴィウ](C)AFP=時事

 今週もお疲れ様でした。ロシア・ウクライナ戦争の開始から2年、戦況は「膠着状態」にありますが、昨日公開の鶴岡路人氏の論考にもあるように、膠着状態は決して「安定的」であることを意味しません。ロシアがウクライナ支配に短期間で成功することも想定された当初を振り返れば、現状はウクライナが国際社会に対する様々な働きかけによって(そしてもちろん、自らの戦いによって)辛くも手繰り寄せた力の拮抗だと言えそうです。

 ただ、この戦争が長期戦が確定的になったという意味では、現状を踏まえて新たな見通しを立てて行く必要も生じています。米「フォーリン・ポリシー」誌サイトから特集記事をご紹介します。

 日本では日経平均株価が過去最高値を上回ったことが話題です。一方でDGP(国内総生産は2四半期連続でマイナス成長。「わくわくしますねっ」と若い世代に水を向けられ複雑な顔で頷く“89年を知る世代”……はおそらく今週の日本各地で繰り広げられた光景ですが、「海外で稼ぐ力」も評価される株価と、「国内で産出された付加価値の総額」であるGDPの乖離を見れば、この34年の間に存在する「経済のグローバル化」の意味合いを改めて考えなければとも思います。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。

Two Years On, What's Next in Ukraine?【Angela Stent, Jo Inge Bekkevold, Kristi Raik, Anders Fogh Rasmussen, Agathe Demarais, Franz-Stefan Gady, David Petraeus, C. Raja Mohan, Stefan Theil/Foreign Policy/2月19日付】

 ロシアがウクライナに侵攻を開始してから2年が経過した。米「フォーリン・ポリシー」誌サイトは、さまざまな分野の専門家8名による経緯・現状の分析と将来の予測を集めた小特集「2年を経て次にウクライナでは何が起きる?」(2月19日付)を掲載した。執筆陣の顔ぶれと、それぞれの見立てを紹介しておこう(小特集の編集は同誌副編集長、ステファン・シールによる)。

「長期戦に備える」

――アンジェラ・ステント[米ブルッキングス研究所非常勤上級研究員]

▼2024年内に戦争終結に向けた交渉が行われたり、どちらかが決定的勝利を収めたりする見通しはない

▼ウラジーミル・プーチン大統領は米大統領戦の結果を待ち、次期大統領が融和策に乗り出すことを期待している

▼休戦して平和条約は締結せず西側がウクライナの安全保障を担うという「韓国モデル」は実現しそうにない

「好むと好まざるとにかかわらず、我々は今、第2次冷戦に突入している」

――ヨー・インゲ・ベッケボルド[ノルウェー防衛研究所中国担当上級研究員]

▼中国のロシアへの戦争支援は中国と欧州との間の溝を拡げた

▼西側による中国とのデカップリング、デリスキングは、欧州がロシアにエネルギーを依存していたことが教訓となったもの

▼欧州の政治家の多くは現実を直視したがらず、各国は防衛力強化や対中政策で一枚岩になれていない

▼冷戦時代の中ソより現在の中露のパートナーシップの方が強固な地政学的基盤の上にある

▼冷戦時代、米国は中露の差違を利用できたが、現在では中露が西側内部の差違を利用できる

「欧州は単独でやり抜けるのか?」

――クリスティ・ライク[国際防衛安全保障センター(エストニア)副理事長]

▼米大統領戦でのドナルド・トランプ当選という可能性への対処に欧州が失敗すれば、ロシアを利し、NATO[北大西洋条約機構]を弱体化させる

▼軍事力強化と米国依存からの脱却をうたうエマニュエル・マクロン大統領やオラフ・ショルツ首相の「大言壮語」はまだ実行に至っていない

▼欧州は実のところロシアの敗北を望んではおらず……

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