
1948年のイスラエル建国以来、同国を一貫して軍事・政治・財政面で支援してきたドイツ。2023年10月7日のハマスによるイスラエルに対する大規模攻撃以降も、ドイツ政府はガザで多くの民間人死者を出しているイスラエルの行動を、自衛権の行使として擁護してきた。
一方ドイツには、ヨーロッパ最大のパレスチナ人コミュニティがある。しかし、親イスラエルのドイツで彼らの声は封じられている。彼らはどんな思いでガザの紛争を見つめているのか。ドイツでパレスチナ人の親の元に育ったパレスチナ系ドイツ人の元左派政治家、ユレス・エルカティブ氏(33)から話を聞いた。
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「パレスチナ人として、政治的でないという選択肢はありませんでした」
パレスチナ人の父親を持つエルカティブ氏はそう語る。学生としてドイツにやってきた彼の父親は、彼の母親にあたるドイツ人女性と出会い、そのままドイツに残った。
「3歳で初めて、父の家族がいるイスラエルの町に行ったのですが、イスラエルではパレスチナ人がユダヤ人とは明らかに異なる対応をされているのを目にしました。同じパスポートを持っていても、持つ権利がまったく違うのです。人口3万人以上が住むパレスチナ人の村なのですが、ゴミの回収もなく、舗装された道路ができたのは数年前です。町に入ってすぐのところに、緊急時にパレスチナ人を制圧するために設置された機関銃があります」
ドイツの弾薬でガザの親族が死ぬ
エルカティブ氏は大学生のときに左翼党(リンケ)に入党し、2021年から1年間、ドイツ西部ノルトライン・ウェストファーレン州の同党スポークスパーソンを務めたが、昨年4月に離党した。いまは大学で社会学の研究をしている。
「リンケが分裂することがわかっていたので、離党しました。党が分裂すれば弱体化し、政党を通じた社会正義の実現は難しくなるでしょう」
左翼党でかつて副党首まで務めたザーラ・ヴァーゲンクネヒト連邦議会議員が昨年離党し、2024年1月に左派ポピュリスト政党「ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)」を立ち上げた。
「どんな状況においても、左派は人権や人々の命を保護するために立ち上がるものでしょう。他の国では、左派の政治家はパレスチナの側に立ち、占領や抑圧に反対しています。しかし、残念ながら、一部の声高な個人を除き、ドイツの左派からはそういった声はあまり聞こえてこないのです」
600万人のユダヤ人などを組織的に殺害したホロコーストの過去を持つドイツは、イスラエルの安全保障を「国是」だと主張する。そして、2023年、ドイツはイスラエルへの武器輸出額を3億2650万ユーロ(約538億円)と、前年比の10倍に増やした。米国に次ぐ多さである。

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