市場の楽観を疑うのには十分な理由

Foresight World Watcher's 6Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2024年7月28日
英エコノミスト誌は「世界経済が政治の影響を受けないと考えるのは甘い」と警告する[米ニューヨーク証券取引所。バイデン米大統領の再選キャンペーン終了とハリス副大統領支持のニュースに反応し、7月22日の株式市場は上昇からスタートした](C)AFP=時事

「景気後退を伴わないインフレの沈静化」、いわゆる“ソフトランディング”は歴史的にみてまず成功しないとしばしば指摘されますが、そのソフトランディングを前提にしているのが現在の世界の株高です。米国や日本のみならず、中国を除けば今年はほぼすべての市場で強気相場が展開中。7月18日からの米国株急落は、こうした楽観に冷水を浴びせかけた格好です。

 市場に潜む懸念事項を改めて確認できる記事をピックアップ、ほかにも米大統領選の民主党候補に指名されることが確実になったカマラ・ハリス副大統領の外交政策の分析など、注目記事を集めました。

 フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事6本、皆様もよろしければご一緒に。

Stocks are on an astonishing run. Yet threats lurk【Economist/7月16日付】

Euphoric markets are ignoring growing political risks【Economist/7月18日付】

「今月初め、ゴールドマン・サックスのストラテジストは『サマータイム・ブルース』と題したメモを発表し、ショックのリスクが高まっているなかで株価が債券価格より上昇している点を警告した。JPモルガン・チェースはさらに踏み込んで、収益成長の見込みが低いにもかかわらず多くの投資家が強気の見通しに群がっていると唱えた」
「モルガン・スタンレーの著名な弱気派CIO(最高投資責任者)であるマイク・ウィルソンは、今年初めにいつもの悲観論を捨てて株価は上昇し続けると予測していたが、後になってその予測を覆すような動きを見せている。「私は思うに(中略)10%の調整が今後(米国の大統領)選挙までの間に起こる可能性が高い」と、彼は最近、ブルームバーグテレビジョンに語っている」
「アナリストたちが不安を抱くのには十分な理由がある。バリュエーション、つまり基礎収益をもとに株価を算出する際に用いられる倍率が、高値という範囲を超え、警戒すべき水準まで上昇している。[中略]イェール大学のロバート・シラー教授によって広められた[米国の代表的株価]指標である同指数[S&P500]の循環調整後株価収益率(CAPE)は36となっている。これほど高くなったのはドットコムバブル崩壊直後と2021年の2回だけで、いずれも暴落の前のことだった」

 これは英「エコノミスト」誌サイトに7月16日付で登場した「驚異的な上昇を続ける株価。だが、脅威が潜む」からの一節。同誌は雑誌版7月20日号(オンライン公開は16日以降)において「市場が政治を無視するとき」と題してカバーストーリーで株式市場の過熱を特集しており、この記事もそのうちの1本だ。

 ご存じのとおり、米国の株価は7月18日(木)から急落に転じ、ダウ平均の下落基調はほぼ1週間続いた。この株安は世界に伝播し、日経平均の場合、7月12日(金)から始まった下落が18日に加速。ダウ平均が25日(木)には下げ止まってやや反転した一方、日経平均は26日(金)も下落が続いた。

 長らく上昇が続いてきた株価の調整あるいは反転は以前から予想されており、今回エコノミスト誌の予言が的中したと囃したてることに意味はない。だが、同誌が事前に示していた分析には振り返ってチェックしておくだけの価値がある。

「~脅威が潜む」では、株価が下落に転じるきっかけとなりうる「懸念事項」として次の3点が挙げられている。

この記事だけをYahoo!ニュースで読む>>
カテゴリ: 経済・ビジネス
フォーサイト最新記事のお知らせを受け取れます。
執筆者プロフィール
  • 24時間
  • 1週間
  • f
back to top