
経団連会長を「財界総理」と呼ぶ機会がめっきり減っている。かつて「経済一流、政治三流」といわれ、疑惑や汚職に塗れた政治家を見下ろしていた財界の総本山は、バブル後の「失われた30年」の間に変質。昨今は胆力・知見・人脈に乏しい凡庸な経営者が「物言わぬリーダー」などと批判を浴びながら、日本を代表する会員企業約1500社から成る組織を維持している。
2025年5月に2期4年の任期を終える現会長(住友化学会長)の十倉雅和(74)は先頃、次期会長に日本生命保険会長の筒井義信(70)を指名。下馬評にも上がらなかったダークホースの抜擢に、新鮮味を期待する声が上がるかと思いきや、財界内外であちこちからブーイングが聞こえてくる。
金融は「ナンバー2まで」とされた理由
「経団連会長に筒井氏 日生会長、金融から初」
24年12月17日付朝刊1面トップで人事をスクープした日本経済新聞の記事の見出しはこうだった。
なにしろ、異例尽くめの抜擢である。初代の石川一郎(在任期間1948年3月〜56年2月、前職は日産化学工業社長)以来15人の歴代経団連会長のうち、製造業出身でないのは3代目の植村甲午郎(1968年5月〜74年5月、ニッポン放送社長)と7代目の平岩外四(1990年12月〜94年5月、東京電力会長)の2人だけ。今年5月29日の定時総会で承認されれば筒井は経団連史上3人目の非製造業出身のトップとなり、さらに金融界から初めての選出となる。
「銀行でも、損保でもなく、まさか生保の経営者とは」
財界事情に詳しいベテランのアナリストは同じ金融界でも「生保出身」ということの意外性を強調する。

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。