「規範」の底が抜けるとき

Foresight World Watcher's 4 Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2025年3月23日
エリア: 北米
米トランプ政権もトルコのエルドアン政権も“危険な賭け”に踏み出している[イスタンブール市長のイマモール氏が拘束されたことに抗議する学生たち=2025年3月20日、トルコ・イスタンブール](C)EPA=時事

 米ハーバード大教授で米「フォーリン・ポリシー(FP)誌」コラムニストのスティーブン・M・ウォルト氏が、「トランプ2期目について私は何を読み間違えたか」という論考を発表しています。詳細は以下本文をお読みいただくとして、第2次トランプ政権発足から2カ月が経過し、この間に打ち出された政策を俯瞰すべき時期に来ています。

 “読み間違えた”とは言っても、挙げられているポイントは「ここまで急進的とは…」というものが多くを占め、想定し得るリスクとしては目新しいものでもなさそうです。ただ、確かにその展開があまりに早い。それはアメリカ国内政治においても、あるいはアメリカが中核となって築かれてきた国際秩序においても、変化の作用と反作用の予測を極めて難しいものにします。

 そのストレスは、端的には英「エコノミスト」誌が「危険な株式市場ゲームをプレイしている」と指摘するように、金融・株式市場に蓄積されています。そして中長期的には(と言ってもいられない速度をもって)、アメリカの国力そのものにも影響を与えることが避けられないように思います。

 アメリカの覇権は、安全保障のコストをグローバリズムが生む経済的なメリットで相殺し、価値観やルール、言い換えれば「規範(norm)」の共有によって補強されることで維持されてきたと言えるでしょう。そのグローバリズムが関税政策で寸断されるのみならず、規範の“底”も抜けつつある。トルコでイスタンブール市長のイマモール氏が拘束されたことは、トランプ大統領が「外国の独裁者による弾圧に対する責任追及に全く関心を示さない」ことと切り離せない関係にあると、米中東研究所のゴヌル・トル氏は指摘しています。

 フォーサイト編集部が熟読したい海外メディア記事4本、よろしければご一緒に。

The Trump administration is playing a dangerous stockmarket game【Economist/3月19日付】

「トランプ政権は株価下落に対して極めて無頓着だ。[略]アメリカの長期にわたる株式市場の好況に一時的な落ち込みが見られる――S&P500指数は2月の史上最高値から8%下落――のは、ドナルド・トランプの関税への熱意が原因である可能性もあるが、新政権が物事に対してかなり寛容で、有害な政策を今後も継続する可能性が高いとの認識によって事態はさらに悪化している」
「昨年末時点で、家計と非営利団体が保有する上場企業の株式は総額38兆ドルに達した。この額は、過去6年間で128%増という爆発的な増加の結果だ。このような時価総額は現在、アメリカの可処分所得の1.7倍に相当し、過去の平均の2倍を超えており、この比率は1947年以降の記録では最高水準に迫っている。株式市場の低迷が長引けば、政治と経済の両方に深刻な影響を及ぼす」

 このような懸念を示すのは「エコノミスト」誌だ。「トランプ政権がプレイしているのは危険な株式市場ゲーム」(3月19日付)は、さらに続く。

カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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