対テロ戦争は米国に、新たな戦略課題を突きつけている。イスラム社会を国際システムに組み込めるか。そして自国民の団結と連帯をいかにして維持するのか。国際政治のパラダイムが激しくきしむ――。[ワシントン発]九月十一日はここを発ちすでに欧州に行っていたから、一カ月半近くワシントンには帰っていなかった。一つのテロ行為がこうまで国民の気分を激変させるものか。 IMF(国際通貨基金)のエコノミストをしている友人は、いささか哲学的になっていた。「人間というのは誰しも死ぬ運命にあるのに、そしてそれは誰にとっても最大の関心事であるにもかかわらず、私たちは日常そのことをそれほど深く考えずに生活していく術を知っている。しかし、あの日以来、メディアでは毎日、テロだ、炭疽菌だ、注意しよう、警戒しようとそればかりだ。人々は常に死ぬということを意識させられ、それと背中合わせに生きている」

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