【キーパーソン】生田正治 郵政公社初代総裁は「市場原理」を知る戦術家

執筆者:安西巧 2002年11月号

 とにかく「長いものには巻かれろ」式の非合理性が何より嫌いらしい。「和をもって尊しとせず」 生田正治(六七)がこう言い放ったのは、商船三井社長だった四年前の九八年十一月。社内向けに檄を飛ばしたという話ならまだしも、これが半年後に控えていたナビックスラインとの合併方針の一項目だったから、周囲は度肝を抜かれた。 厳しい業界環境からすれば「社内融和に無駄な時間を費やしている余裕はない」というのが生田の真意だったろうが、社長の過激発言に慣れっこになっていた商船三井社内はともかく、事実上吸収合併される立場のナビックス社員・幹部にとっては不安の火に油を注がれた感があったに違いない。

カテゴリ: 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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