新日鉄に追いついたJFEの事業再生術

執筆者:安西巧 2003年8月号
エリア: アジア

旧NKKと旧川崎製鉄を統合したJFEが、営業・経常・最終すべての損益で新日鉄を上回った。業績急回復の深層と課題に迫る。「マラソンでいえば、背中に息がかかるほど追いつかれた感じ。正直いって、あちらのピッチの速さは予想外だった」 新日本製鉄のある系列会社トップはこんな感想をもらす。追いつかれたのは、自分の出身母体でもある新日鉄。背中に息がかかるほど迫ってきた「あちら」というのは、NKKと川崎製鉄が経営統合して昨年九月に発足したJFEホールディングスのことである。 五月に発表された二〇〇三年三月期決算(連結)。すでに三月時点の業績予想で流れは見えていたものの、確定数値は鉄鋼業界に改めて衝撃を与えた。JFEは売上高では三千億円ほど及ばなかったが、営業・経常・最終すべての損益で新日鉄を上回ったのである。逆転要因は、統合に伴う物流の共通化や生産設備の集約などによる合理化で、そのコスト削減額は二百億円に達した。

カテゴリ: 経済・ビジネス 政治
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執筆者プロフィール
安西巧(あんざいたくみ) ジャーナリスト 1959年福岡県北九州市生まれ。1983年早稲田大学政治経済学部政治学科卒、日本経済新聞社入社。主に企業取材の第一線で記者活動。広島支局長、編集委員などを歴任し、2024年フリーに。フォーサイトでは「杜耕次」のペンネームでも執筆。著書に『経団連 落日の財界総本山』『広島はすごい』『マツダとカープ 松田ファミリーの100年史』(以上、新潮社)、『さらば国策産業 電力改革450日の迷走』『ソニー&松下 失われたDNA』『西武争奪 資産2兆円をめぐる攻防』『歴史に学ぶ プロ野球16球団拡大構想』(以上、日本経済新聞出版)など。
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