饗宴外交の舞台裏 (118)

病体には香辛料が辛かった アジアのエスニック料理

執筆者:西川恵 2007年11月号
エリア: アジア

 安倍晋三首相が辞任を決意した理由のひとつは健康問題にあったが、その“引き金”になったのは八月十九日から二十五日までのインドネシア、インド、マレーシアへの訪問だった。その前から体調は悪かったが、首相周辺の証言によると「この三カ国歴訪でひどく腹を下してしまい、体力が急速に消耗した」という。 安倍首相はもともと胃腸が弱く、カレーなど香辛料や刺激のきつい料理は避けていた。しかしよりによってイスラム、ヒンズー文化の三カ国は、料理に香辛料をたっぷり使い、トウガラシなど刺激のあるものが多い。体調不良のところにもってきて苦手な料理。それも昼夜と続く饗宴。体調が悪化したのも当然といえば当然だ。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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