中東―危機の震源を読む (49)

ソマリア沖海賊問題へのアラブ諸国の複雑な感情

執筆者:池内恵 2009年1月号
エリア: アフリカ 中東

 ソマリアとイエメンの沖合中心に活発化した海賊が、国際政治の焦点となっている。六月の国連安保理決議一八一六に基づきインド、ロシア、南アフリカ共和国、アメリカ、NATO(北大西洋条約機構)などの艦船が派遣され、アデン湾やソマリア沖での警戒活動に当たる。EU(欧州連合)も、初の海軍共同作戦を開始した。(13頁に関連地図) では、中東諸国はどのように対応しているのだろうか。中東諸国にとっても、この問題は重大な関心事のはずである。スエズ運河の通航料はエジプトの主要な外貨獲得源である。紅海の出口が海賊の多発地帯となっており、危険を避けて南アの喜望峰回りにルート変更する動きは国家財政への打撃となる。

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執筆者プロフィール
池内恵(いけうちさとし) 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。
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