澄みきった冬空に雪を戴く富士の麗容。日本人なら思わず手を合わせたくなる。その自然の情が、西洋人キリスト教徒には通じない。
彼らは滅多なことでは手を合わせない。山や海や昇る朝日、沈む太陽、海、コメを拝まない。へっついさんや井戸を祭る行為を理解しない。キツネが神になって、油揚を召し上がると聞いて驚く。日本には八百万の神がおわすが、彼らは一神教である。主の十戒は、その第一に「われはなんじの主、われの外にいかなるものをも神としてはならない」とある。モーゼがシナイ山で神と結んだ契約に発する、彼らの信仰とエートスの基礎中の基礎である。

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