国際論壇レビュー

小泉首相の「ナショナリズム」を懸念する海外報道の「一面性」

 小泉純一郎政権が誕生して一カ月ほどたった。日本国内での圧倒的な人気は海外でも注目されている。とはいえ、世界的にみれば、小泉政権の誕生もいくつかあるさまざまなニュースの一つのテーマに過ぎない。 この一カ月は、他を圧するようなテーマはあまり見られなかった。長期的にいえば、NMD(米本土ミサイル防衛)構想とTMD(戦域ミサイル防衛)構想を一体化してミサイル防衛とする方針をブッシュ政権が示したが、こうしたアメリカの軍事戦略の展開が重要性をもっているように見える。日本を見るステレオタイプ 海外から日本を見る眼にはある種のステレオタイプが常に存在する。その一つのタイプは、「改革者」と「ナショナリスト」という二項対立である。日本政治の「改革者」は、既得権益を打破する人であって、「新しい」勢力である。この「新しい」勢力は、民主的であり、国際的であり、古いシンボルであるナショナリストとは反対の勢力であるとみられている。したがって、このステレオタイプからすれば、小泉首相はやや捉えがたい「現象」ということになるようである。

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執筆者プロフィール
田中明彦(たなかあきひこ) 1954年、埼玉県生まれ。東京大学教養学部卒業。マサチューセッツ工科大学大学院博士課程修了(Ph.D. 政治学)。東京大学東洋文化研究所教授、東京大学副学長、国際協力機構(JICA)理事長、政策研究大学院大学学長、三極委員会アジア太平洋地域議長などを経て、2022年4月より再び国際協力機構(JICA)理事長に就任。著書に『新しい「中世」―21世紀の世界システム』(サントリー学芸賞受賞)、『ワード・ポリティクス―グローバリゼーションの中の日本外交』(読売・吉野作造賞)、『アジアのなかの日本』、『ポスト・クライシスの世界―新多極時代を動かすパワー原理』など。
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