国際論壇レビュー

深刻化する「中国のサイバー攻撃」とその先にある「新しい戦争」

 2017年6月。中国の軍事侵攻の危機にさらされる台湾。米空母戦闘群が防衛に向かった。その時、北米大陸の送電線網に異常が生じ、大停電が起きる。中国国家主席はホットラインで結ばれた米大統領に対し、「さらなる停電の拡大もありうるだろう」と脅す。台湾防衛に向かっていた米空母戦闘群は任務を断念。退却を余儀なくされた。送電線網撹乱による停電拡大は、金融、航空輸送をはじめ、米国のインフラにどこまで壊滅的打撃を与えるか、予測もつかない……。
 新刊『脆弱なるアメリカ』が描き出す近未来の「米中サイバーウォー(電子戦)」の姿だ。著者は一昨年まで米政府の情報防護(対スパイ)活動を統括していたジョエル・ブレナー。紙の発行を止めサイバー新聞となった米紙「クリスチャン・サイエンス・モニター」が、書評で大きく取り上げた。書評では、ブッシュ前政権のテロ対策特別補佐官リチャード・クラークの著書『サイバーウォー』も紹介された。同書は昨年出版され波紋を広げた。 【America the Vulnerable, The Christian Science Monitor, Nov. 4】

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執筆者プロフィール
会田弘継(あいだひろつぐ) 関西大学客員教授、ジャーナリスト。1951年生まれ。東京外語大英米語科卒。共同通信ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、論説委員長などを務め、現在は共同通信客員論税委員、関西大学客員教授。近著に『世界の知性が語る「特別な日本』』 (新潮新書)『破綻するアメリカ』(岩波現代全書)、『トランプ現象とアメリカ保守思想』(左右社)、『増補改訂版 追跡・アメリカの思想家たち』(中公文庫)など。訳書にフランシス・フクヤマ著『政治の衰退』(講談社)など。
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