「遊民経済学」への招待 (12)

ギャンブルとバブルと破綻処理について

執筆者:吉崎達彦 2015年9月5日
エリア: ヨーロッパ アジア

 遊民経済学を語っていくと、どこかで大真面目にこの問題と向き合わなければならない。ギャンブルのことである。

「ギャンブルは遊びの一種か」
「ギャンブルは経済行為の一部か否か」
「紳士の嗜みか、公序良俗を害するものか」

 社会学の領域において、「遊び」をテーマにした古典的名著が2つある。ヨハン・ホイジンガの『ホモ・ルーデンス』と、ロジェ・カイヨワの『遊びと人間』である。前者はギャンブルをほとんど無視し、後者は遊戯の1分野として分析した。
 すなわち、オランダの歴史学者たるホイジンガは、「文明とは遊ぶこと也」と喝破したのであるが、遊戯というものは本来、物質的な利益を求めるのものではない。従ってギャンブルは偽りの遊戯であり、文化の発展には貢献しないと切り捨てた。

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執筆者プロフィール
吉崎達彦(よしざきたつひこ) 双日総合研究所チーフエコノミスト。1960年(昭和35年)富山市生まれ。一橋大学社会学部卒業後、1984年日商岩井(現双日)に入社。米国ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会調査役などを経て現職。新聞・経済誌・週刊誌等への執筆の他、「サンデープロジェクト」等TVでも活躍。また、自身のホームページ「溜池通信」では、アメリカを中心に世界の政治経済について鋭く分析したレポートを配信中。著書に『溜池通信 いかにもこれが経済』(日本経済新聞出版社)、『1985年』(新潮新書)など、共著に『ヤバい日本経済』(東洋経済新報社)がある。
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