ドネツクで夜を過ごした翌朝の5月7日、運転手の案内で市内の被災地を見て回った。郊外の住宅街に行くと、団地の壁に砲撃や銃撃の痕跡が生々しい。穴だらけで廃虚のようになった棟もある。中に人がいるとは思わず壁の写真を撮っていたら、レンズの向こうに人影が見えた。4階の窓から住人らしき男性がこちらを見つめている。気まずくなって、何となく手を振ってみる。先方も、苦笑いしながら手を振る。
タンクを載せた車の後ろに、住民が長い行列をつくっている。牛乳の配給だという。戦争の影響だろう。通常の商業活動は完全に戻っておらず、一部の生活必需品は配給制になっているようだ。

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