ドネツク人民共和国往還記(下)「軍服も自前」のウクライナ兵士

執筆者:国末憲人 2015年11月21日
タグ: ロシア シリア
エリア: ヨーロッパ 中東

 ドネツクで夜を過ごした翌朝の5月7日、運転手の案内で市内の被災地を見て回った。郊外の住宅街に行くと、団地の壁に砲撃や銃撃の痕跡が生々しい。穴だらけで廃虚のようになった棟もある。中に人がいるとは思わず壁の写真を撮っていたら、レンズの向こうに人影が見えた。4階の窓から住人らしき男性がこちらを見つめている。気まずくなって、何となく手を振ってみる。先方も、苦笑いしながら手を振る。

 タンクを載せた車の後ろに、住民が長い行列をつくっている。牛乳の配給だという。戦争の影響だろう。通常の商業活動は完全に戻っておらず、一部の生活必需品は配給制になっているようだ。

カテゴリ: 政治 社会 軍事・防衛
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執筆者プロフィール
国末憲人(くにすえのりと) 東京大学先端科学技術研究センター特任教授 1963年岡山県生まれ。85年大阪大学卒業。87年パリ第2大学新聞研究所を中退し朝日新聞社に入社。パリ支局長、論説委員、GLOBE編集長、朝日新聞ヨーロッパ総局長などを歴任した。2024年1月より現職。著書に『ロシア・ウクライナ戦争 近景と遠景』(岩波書店)、『ポピュリズム化する世界』(プレジデント社)、『自爆テロリストの正体』『サルコジ』『ミシュラン 三つ星と世界戦略』(いずれも新潮社)、『イラク戦争の深淵』『ポピュリズムに蝕まれるフランス』『巨大「実験国家」EUは生き残れるのか?』(いずれも草思社)、『ユネスコ「無形文化遺産」』(平凡社)、『テロリストの誕生 イスラム過激派テロの虚像と実像』(草思社)など多数。
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