饗宴外交の舞台裏 (212)

新首相「強行軍」訪日で証明された「日豪」の蜜月

執筆者:西川恵 2016年1月14日
エリア: ヨーロッパ アジア

 環太平洋パートナーシップ(TPP)協定の合意など2015年は安倍晋三首相にとって大きな外交成果の年となったが、掉尾を飾ったのがオーストラリアのマルコム・ターンブル首相の師走の訪日だった。

 この3年、安倍首相がことのほか強い個人的関係を築いてきた首脳が3人いる。トルコのエルドアン大統領、ロシアのプーチン大統領、そして豪州のアボット前首相だ。

 特に知日派のアボット前首相とはウマが合った。2013年9月に就任した前首相は安倍首相を「最高の友」と呼び、両首脳の下で経済連携協定(EPA)や「防衛装備品及び技術の移転に関する協定」の締結、毎年の首相相互訪問の合意など、日豪関係は飛躍的に深化した。それだけに昨年9月、前首相が与党・自由党の党首選でターンブル氏(前通信相)に敗れたことは日本側に衝撃を与えた。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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