これまでインドネシアは、中国と東南アジア諸国の間で生じている南シナ海の領有権問題に直接は関与してこなかった。中国の主張する領海とインドネシアの領海が直接重なることはなかったからである。そのためインドネシア政府は、この問題をめぐって対立が深刻化しつつある中国と、ベトナム、フィリピンなどの東南アジア諸国との間を取りもつ「良き仲介者」として、東南アジア諸国連合(ASEAN)の場を通じて平和的に紛争を解決しようと努力してきた。
しかし、ジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)政権が目玉政策として推し進めている密漁対策と中国の海洋進出が、互いの「主権と国益の維持」をめぐってインドネシアの領海で衝突するという事件が3月に発生した。また、アメリカがフィリピンと協力して南シナ海問題への関与を深めつつある一方、中国は東南アジアの親中派に接近してASEANの分断を図ろうとするなど、インドネシアのこれまでの外交のあり方を問い直すような事態が進みつつある。ジョコウィ政権は、これからのインドネシアと中国の関係をどうしようと考えているのだろうか。
この続きは会員登録をすると読むことができます。
「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。
フォーサイト会員の方はここからログイン