軍事のコモンセンス (22)

憲法改正の「必要性」と「可能性」(下)

執筆者:冨澤暉 2017年6月18日
エリア: 北米 アジア
5月3日、憲法改正推進派のフォーラムに向けたビデオメッセージで、改憲について語る安倍晋三自民党総裁 (C)時事

 

「前項の目的を達するために」という、いわゆる「芦田修正」については、本稿(上)の第1項関係の記述の中ですでに述べた。GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)民政局次長チャールズ・ケーディス大佐はじめ占領軍側から「この修正は当然」と認められたのに日本国内で認められなかったのは、「前項の目的を達するために……保持しない」という曖昧な日本語表現のためであり、また後に芦田自身が、「あれは当然自衛権はある、という意味で挿入したものだ。そのことは小委員会の議事録にも自分の日誌にも記録されている」と説明したにもかかわらず、その記録が発見されなかったためでもある。爾来、日本政府もこの芦田修正を「自衛権容認」の証拠として使ったことはない。

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執筆者プロフィール
冨澤暉(とみざわひかる) 元陸将、東洋学園大学理事・名誉教授、財団法人偕行社理事長、日本防衛学会顧問。1938年生まれ。防衛大学校を卒業後、陸上自衛隊に入隊。米陸軍機甲学校に留学。第1師団長、陸上幕僚副長、北部方面総監を経て、陸上幕僚長を最後に1995年退官。著書に『逆説の軍事論』(バジリコ)、『シンポジウム イラク戦争』(編著、かや書房)、『矛盾だらけの日本の安全保障』(田原総一朗氏との対談、海竜社)。
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