饗宴外交の舞台裏 (233)

「元大使夫人」に学ぶ「プロトコール」の本質

執筆者:西川恵 2017年11月1日
タグ: 国連 日本
プロトコール(外交儀礼)についての著作を上梓した阿曽村智子さん (筆者提供)

 

 元大使夫人がプロトコール(外交儀礼)に関する著作を上梓した。長年の研究と、自身の大使夫人時代の経験を踏まえた力作で、外務省の儀典担当者も「我々にも大いに役立ちます」と太鼓判を押している。

学究肌の人

 著作『国際交流のための現代プロトコール』(東信堂)を上梓したのは現在、学習院女子大学の非常勤講師を務める阿曽村智子さん(65)。
 阿曽村さんは夫の邦昭氏が外務省を退官した翌1999年から、同大で文化政策や国際儀礼について講義する傍ら、世界のプロトコールに関する資料を収集して著作の準備をしてきた。
 「初めは学生たちに読んでもらう講義用テキストと考えていたのですが、外交官、企業の方などと話すと、おもてなしのマナーや礼儀、また接遇の仕方などについて知りたいという方が結構いらっしゃる。世の中で広く必要とされていると感じ、結果として幅広い内容を扱うことになりました」
 阿曽村さんは学究肌の人だ。お茶の水女子大学大学院で歴史学を研究し、ギリシャ、英国に留学。1984年からパリの国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)本部に勤務し、1988年に外務省職員だった邦昭氏と結婚した。
 邦昭氏は翌1989年から、ベトナム(1989~1991年)、チェコスロバキア(1991~1994年、途中からスロバキアと分離しチェコに)、ベネズエラ(1994~1998年)と3カ国の日本大使を歴任。いずれにも阿曽村さんは同行した。
 阿曽村さんはただ大使夫人に収まっているだけでは満足できず、ベトナムでは国連開発計画(UNDP)ハノイ事務所で文化教育顧問を、チェコスロバキアでは国立カレル大学の博士課程に入学し、歴史学の博士号を取得。ベネズエラでは国立ベネズエラ中央大学で客員教授として日本外交を講義した。

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執筆者プロフィール
西川恵(にしかわめぐみ) 毎日新聞客員編集委員。日本交通文化協会常任理事。1947年長崎県生れ。テヘラン、パリ、ローマの各支局長、外信部長、専門編集委員を経て、2014年から客員編集委員。2009年、フランス国家功労勲章シュヴァリエ受章。著書に『皇室はなぜ世界で尊敬されるのか』(新潮新書)、『エリゼ宮の食卓』(新潮社、サントリー学芸賞)、『ワインと外交』(新潮新書)、『饗宴外交 ワインと料理で世界はまわる』(世界文化社)、『知られざる皇室外交』(角川書店)、『国際政治のゼロ年代』(毎日新聞社)、訳書に『超大国アメリカの文化力』(岩波書店、共訳)などがある。
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