「君主号」の世界史 (17)

中世からナポレオンへ

執筆者:岡本隆司 2018年11月10日
エリア: ヨーロッパ
「太陽王」と称された、フランスのルイ14世。確かに欧州の中心で輝いてはいたが、全体を統合していたわけではなかった

 

 アウグストゥスが一体化したローマの「帝国インペリウム」は、ディオクレティアヌス以降、多元化の様相を強め、ついに皇帝並立の体制が定着した。そのインペリウム・皇帝がキリスト教と一体となっても、その多元化はとどまらない。ローマ教会は独自のローマ皇帝を擁立しつつ、なおかつ自らローマ皇帝の正統な後継者を以て任じた。

中世と多元化の深まり

 そのローマ皇帝を戴く地域は、ひとまずドイツ・イタリアである。しかし西隣のフランスのroi王も、自らを「皇帝」に比擬し、実在の神聖ローマ皇帝やローマ教皇との争いを辞さなかった。もちろんローマ教会の埒外には、古代ローマの正統ながらギリシア化した東ローマが存在する。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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