「君主号」の世界史 (21)

日本と天皇

執筆者:岡本隆司 2019年1月12日
タグ: 中国 日本
エリア: アジア
稲荷山古墳から出土した「金錯銘鉄剣」。銘文の「獲加多支鹵大王」は雄略「天皇」、「倭王武」に比定されている(埼玉県立さきたま史跡の博物館蔵)
 

 

泰平の眠りをさます上喜撰、たった四はいで夜もねられず。

 19世紀の半ば、4隻の黒船の来航は、日本の歴史を画した「開国」の始まり、その衝撃をあざやか、かつ軽妙に表現した、あまりに有名な狂歌である。「眠り」から覚めて、起き上がって行きついた先は「御一新」、明治維新という政体の変革だった。

「尊皇攘夷」?

 その明治維新、いま英語でどう訳するのかは、寡聞にして知らない。しかしかつて、筆者が勉強していたころは、Restorationといっていた。つまり「王政復古」である。その「王政」とは天皇の政権にほかならない。君主はあくまで天皇であって、そのしかるべき実権を徳川将軍から奪回したという観念が、その根底にある。

カテゴリ: 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
岡本隆司(おかもとたかし) 京都府立大学文学部教授。1965年、京都市生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。専門は近代アジア史。2000年に『近代中国と海関』(名古屋大学出版会)で大平正芳記念賞、2005年に『属国と自主のあいだ 近代清韓関係と東アジアの命運』(名古屋大学出版会)でサントリー学芸賞(政治・経済部門)、2017年に『中国の誕生 東アジアの近代外交と国家形成』で樫山純三賞・アジア太平洋賞特別賞をそれぞれ受賞。著書に『李鴻章 東アジアの近代』(岩波新書)、『近代中国史』(ちくま新書)、『中国の論理 歴史から解き明かす』(中公新書)、『叢書東アジアの近現代史 第1巻 清朝の興亡と中華のゆくえ 朝鮮出兵から日露戦争へ』(講談社)、『悪党たちの中華帝国』(新潮選書)など多数。
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