「金正日倒る」の複雑な状況曲線

執筆者:平井久志 2008年10月号
タグ: 北朝鮮
エリア: アジア

「共和国創建六十周年を迎える今年を祖国青史に刻まれる歴史的な転換の年として輝かせよう」。北朝鮮の労働新聞などは今年元旦の共同社説で、九月九日の建国六十周年の意義をそう強調していた。北朝鮮はこの日までに米国からテロ支援国の指定解除を勝ち取り「歴史的な転換の年」であることを決定づけようとしていたとみられるが、結果的には最高指導者、金正日総書記の重病という予想もしなかった「転換」に直面することになってしまった。 これまでも金総書記が数十日間「雲隠れ」することは珍しくなかった。だが、九月九日の閲兵式に金総書記が姿を見せなかったため、重病説は一気に現実味を帯びた。「先軍政治」を掲げる金総書記が閲兵式に欠席するのは極めて異例だからだ。一九九一年十二月に最高司令官に就任して以来、翌九二年四月から昨年四月まで計十回あった閲兵式には一度も欠席していない。

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執筆者プロフィール
平井久志(ひらいひさし) ジャーナリスト。1952年香川県生れ。75年早稲田大学法学部卒業、共同通信社に入社。外信部、ソウル支局長、北京特派員、編集委員兼論説委員などを経て2012年3月に定年退社。現在、共同通信客員論説委員。2002年、瀋陽事件報道で新聞協会賞受賞。同年、瀋陽事件や北朝鮮経済改革などの朝鮮問題報道でボーン・上田賞受賞。 著書に『ソウル打令―反日と嫌韓の谷間で―』『日韓子育て戦争―「虹」と「星」が架ける橋―』(共に徳間書店)、『コリア打令―あまりにダイナミックな韓国人の現住所―』(ビジネス社)、『なぜ北朝鮮は孤立するのか 金正日 破局へ向かう「先軍体制」』(新潮選書)『北朝鮮の指導体制と後継 金正日から金正恩へ』(岩波現代文庫)など。
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