インドシナから消えた「ロシアの影」と席巻する「チャイナマネー」

プノンペンに増え始めた高層ビルはすべて中国資本(筆者撮影)

 

 筆者は最近、大学の委託研究で35年ぶりにカンボジアの首都プノンペンを訪れたが、かつて見たポル・ポト政権崩壊後の「焼け跡」からすっかり復興し、活気にあふれていた。当時は原始資本主義のような混乱の中、ソ連人とベトナム人が市内を闊歩していたが、その影は一掃され、代わって中国人が大量進出していた。インドシナをめぐる国際環境は激変し、中国がカンボジアをどう改造するかが壮大な実験となりつつある。

イオンの隣の幽霊屋敷

 プノンペン南部の一等地に2014年にオープンした日本のスーパー「イオンモール」は、フードコートやシネマコンプレックス、ブランド店など日本と同じ作りで、平日もカンボジア人でごった返していた。巨大な2号店も郊外に誕生し、イオンはカンボジアで計5店の出店を計画している。

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執筆者プロフィール
名越健郎(なごしけんろう) 1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局、ワシントン支局、外信部長、編集局次長、仙台支社長を歴任。2011年、同社退社。拓殖大学海外事情研究所教授。国際教養大学特任教授を経て、2022年から拓殖大学特任教授。著書に、『秘密資金の戦後政党史』(新潮選書)、『ジョークで読む世界ウラ事情』(日経プレミアシリーズ)、『独裁者プーチン』(文春新書)など。
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