「シリア撤退」で再燃する「米グアンタナモ収容所」人権問題

執筆者:渡邉優 2019年6月11日
エリア: 中南米
収容者は40名に減ったが……(C)EPA=時事

 

 皆さんは覚えているだろうか。キューバにある米国のグアンタナモ海軍基地に、オレンジ色の囚人服と黒い頭巾に包まれ、手錠と鎖でつながれて連行される、いわゆる「テロ容疑者」たちの姿を。

 2001年9月11日に米国で発生した同時多発テロ事件の後、米国は「テロとの戦い」を開始し、アフガニスタン人、パキスタン人、イエメン人などアルカイダのメンバーを中心とするテロ容疑者たちを次々と摘発した。

 米国は、キューバ島の南東部に位置するグアンタナモ米海軍基地をこれら容疑者たちの収容所として選定し、2002年の1月以降、延べ800名近くのこれらテロ容疑者を拘留した。多くは釈放され、あるいは第三国に移送されて、現在の被収容者は40名まで減っている。グアンタナモでの人権問題を指摘する声は依然として続いているものの、世界の関心は薄れ、メディアの報道も少なくなってきたのが実態である。

カテゴリ: 政治 社会 カルチャー
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執筆者プロフィール
渡邉優(わたなべまさる) 防衛大学校教授。1956年東京都生まれ。東京大学卒業後、外務省勤務。西欧第二課長、大臣官房審議官(欧州局、中南米局、経済局、中東アフリカ局)、農畜産業振興機構理事などを歴任。在スペイン、在ブラジル、在フィリピン、在アルゼンチンの各大使館と在ジュネーブ日本政府代表部に赴任した他、在リオデジャネイロ総領事、在キューバ特命全権大使を務める。2019年4月より現職。著書『あなたもスペイン語通訳になれる』(日本スペイン協会)、『ジョークで楽しく学ぶスペイン語』(ベレ出版)、『知られざるキューバ』(ベレ出版)、『グアンタナモ: アメリカ・キューバ関係にささった棘』(彩流社)。監修に『SDGsのきほん未来のための17の目標』(全17巻、ポプラ社) 。作詞、劇画脚本も手がける。
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