岩瀬昇のエネルギー通信 (164)

実は「密輸だったから」イラン「タンカー拿捕」の深層

執筆者:岩瀬昇 2019年7月19日
「リア」号事件を伝えるUAEの現地報道

 

 筆者がテヘランに勤務していた1996年、「JICA(国際協力機構)」からの出張者を迎えたことがある。燃料の過剰消費による環境汚染に悩まされているテヘランで、「省エネ化を実現する」という無償協力事業の事前調査が目的とのことだった。

 テヘラン市内および周辺の工場などを訪問して、燃料消費の実態を把握することから始めようとしているが、「困難に直面している」と言う。どこに行っても責任者は「どのくらい消費しているのか、まったく把握していない」と言うのだそうだ。なぜなら多額の補助金が出ているので、石油もガスも「タダのように安いから、気にしていない」のだと。

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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