岩瀬昇のエネルギー通信 (226)

「OPECプラス」でサウジ提案「追加減産」に「プーチン」の思惑

執筆者:岩瀬昇 2020年3月5日
エリア: アジア 中東 その他
プーチン大統領「支持率」の変化(出典:本文中に)
 

 2014年後半に油価暴落が始まり、大産油国であるロシアの通貨・ルーブルも大幅安に見舞われた。原油・ガスの輸出収入が急減し、そこにルーブル安も重なって、ロシア経済は完全にマヒしてしまった。

 だが、ロシアの石油会社の業績はその後も好調だった。

 2016年6月に出版した『原油暴落の謎を解く』(文春新書)の中で筆者は、次のように書いた。

〈ロシアの石油会社の収益は、奇妙なことに2014年末以降に原油価格が暴落した後も順調である。もちろんコスト削減の努力もしているが、輸出代金がドル建てであるのに対し、費用は現地産資機材および人件費がルーブル建てであるため、安定した収益をあげている。さらにプーチン現政権下の石油業界優遇策の一つとして、輸出税一部免除の恩恵を受けていることも一つの要因であろう。原油価格50ドルを前提に国家予算を作成しているロシア政府は、2016年4月下旬、世界最大の天然ガス企業であるガスプロムを含む8大国営会社に「利益の50%を配当すること」を法制化したほどである〉

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執筆者プロフィール
岩瀬昇(いわせのぼる) 1948年、埼玉県生まれ。エネルギーアナリスト。浦和高校、東京大学法学部卒業。71年三井物産入社、2002年三井石油開発に出向、10年常務執行役員、12年顧問。三井物産入社以来、香港、台北、2度のロンドン、ニューヨーク、テヘラン、バンコクの延べ21年間にわたる海外勤務を含め、一貫してエネルギー関連業務に従事。14年6月に三井石油開発退職後は、新興国・エネルギー関連の勉強会「金曜懇話会」代表世話人として、後進の育成、講演・執筆活動を続けている。著書に『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?  エネルギー情報学入門』(文春新書) 、『日本軍はなぜ満洲大油田を発見できなかったのか』 (同)、『原油暴落の謎を解く』(同)、最新刊に『超エネルギー地政学 アメリカ・ロシア・中東編』(エネルギーフォーラム)がある。
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