【特別コラム】コロナと生きるということ(6)壊れた社会の回復のために

執筆者:内山節 2021年2月11日
エリア: アジア
 

 群馬県の山村、上野村は私の「村の家」がある里である。半世紀ほど前にこの村を訪れ、それからは釣りをしながら長期滞在をするようになった。村を貫くように神流川が流れ、そこはヤマメやイワナの暮らす源流の川である。

 次第に村人とのつき合いも広がり、私はこの村で暮らしたくなった。村人から古い民家や森、畑を譲ってもらい、ここが自分の里になった。仕事の都合もあって村と東京を行き来する生活ではあるが、気分的には上野村が私の本拠地である。ここは人口1200人ほどの村で、私の家は数軒だけの小さな集落のなかにある。周囲を山が包み、風の音や鳥の声、夜になると鹿の鳴き声だけが私の耳に伝わってくる。

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執筆者プロフィール
内山節(うちやまたかし) 哲学者。1950年、東京生まれ。群馬県上野村と東京を往復しながら暮らしている。著書に『「里」という思想』(新潮選書)、『新・幸福論』(新潮選書)、『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』(講談社現代新書)、『修験道という生き方』(共著、新潮選書)、『いのちの場所』(岩波書店)、『内山節著作集』(全15巻、農山漁村文化協会)など多数。
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