群馬県の山村、上野村は私の「村の家」がある里である。半世紀ほど前にこの村を訪れ、それからは釣りをしながら長期滞在をするようになった。村を貫くように神流川が流れ、そこはヤマメやイワナの暮らす源流の川である。
次第に村人とのつき合いも広がり、私はこの村で暮らしたくなった。村人から古い民家や森、畑を譲ってもらい、ここが自分の里になった。仕事の都合もあって村と東京を行き来する生活ではあるが、気分的には上野村が私の本拠地である。ここは人口1200人ほどの村で、私の家は数軒だけの小さな集落のなかにある。周囲を山が包み、風の音や鳥の声、夜になると鹿の鳴き声だけが私の耳に伝わってくる。
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