未完の「習近平思想」の将来を占う「四つの特徴」

執筆者:宮本雄二 2021年7月27日
エリア: アジア
中央政策研究室主任を長年務めた王滬寧氏(右)は、指導者の意向を理論化する上で大きな役割を果たしてきた ⓒAFP=時事
中国共産党創立100周年演説でも強調された「新時代の中国の特色ある社会主義思想」とは、すなわち「習近平思想」だと言える。だが、もはや経済だけでは人々を奮い立たせることはできず、「中華民族の偉大な復興」をキーワードとした理念や価値観の構築は道半ばだ。習近平体制が指向する権力集約は、山積する国内問題、あるいは理論と現実のせめぎ合いに対応するために選択された一つの方法論なのである。

 習近平総書記は、2017年秋に開かれた第19回党大会において、2050年頃までに実質、アメリカに並ぶことを宣言し、チャイナ・モデルは欧米モデルに代わる新たな選択肢となり得ると豪語し、アメリカを強く刺激した。これは「中華民族の偉大な復興」という「中国の夢」の具体的中身の説明なのだが、実は「習近平の新時代の中国の特色ある社会主義思想」、つまり「習近平思想」の重要な構成部分の一つでもあった。しかも、この「習近平思想」は、共産党にとっては憲法に当たる党規約に書き込まれた。ついにマルクス・レーニン主義、「毛沢東思想」、「鄧小平理論」、「“三つの代表”重要思想」(江沢民)、「科学的発展観」(胡錦濤)と並ぶ、共産党の指導理念となったのだ。

カテゴリ: 政治
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執筆者プロフィール
宮本雄二(みやもとゆうじ) 宮本アジア研究所代表、元駐中国特命全権大使。1946年福岡県生まれ。69年京都大学法学部卒業後、外務省入省。78年国際連合日本政府代表部一等書記官、81年在中華人民共和国日本国大使館一等書記官、83年欧亜局ソヴィエト連邦課首席事務官、85年国際連合局軍縮課長、87年大臣官房外務大臣秘書官。89 年情報調査局企画課長、90年アジア局中国課長、91年英国国際戦略問題研究所(IISS)研究員、92年外務省研修所副所長、94年在アトランタ日本国総領事館総領事。97年在中華人民共和国日本国大使館特命全権公使、2001年軍備管理・科学審議官(大使)、02年在ミャンマー連邦日本国大使館特命全権大使、04年特命全権大使(沖縄担当)、2006年在中華人民共和国日本国大使館特命全権大使。2010年退官。現在、宮本アジア研究所代表、日本アジア共同体文化協力機構(JACCCO)理事長、日中友好会館会長代行。著書に『これから、中国とどう付き合うか』『激変ミャンマーを読み解く』『習近平の中国』『強硬外交を反省する中国』『日中の失敗の本質 新時代の中国との付き合い方』『2035年の中国―習近平路線は生き残るか―』などがある。
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