国際人のための日本古代史 (139)

スサノヲ篇(2)
スサノヲの文明論

執筆者:関裕二 2021年9月26日
タグ: 日本
エリア: アジア
文明論を語ったスサノヲ(月岡芳年『日本略史 素戔嗚尊』)
文明とは、金属を使用するために森林を荒廃させる。――それに異を唱えたのが、多神教世界を生きるスサノヲだった。この「反文明宣言」ひとつをとっても、スサノヲ=渡来系神説が成り立ちえないことがわかるのである。

 前回は、スサノヲが二面性をもっていること、それは神の中の神だったから、という話をした。神そのものが鬼でもあり、『日本書紀』の中でスサノヲだけが、神本来の姿を見せていたのだ。ただし、『日本書紀』はスサノヲに簑笠を着せて、蔑まれる鬼に蹴落とした。ここに、大きな謎が隠されている。

「浮く宝」が大切と唱えたスサノヲ

 今回の話は、スサノヲの「反文明宣言」だ。大陸や半島の先進文明を目の当たりにして、危機感を抱いたようなのだ。天上界(高天原)を追放されたスサノヲが、まず朝鮮半島の新羅に舞い下り、そのあと日本列島にやってきた時の話だ。

カテゴリ: カルチャー 社会
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執筆者プロフィール
関裕二(せきゆうじ) 1959年千葉県生れ。仏教美術に魅せられ日本古代史を研究。武蔵野学院大学日本総合研究所スペシャルアカデミックフェロー。著書に『藤原氏の正体』『蘇我氏の正体』『物部氏の正体』、『「死の国」熊野と巡礼の道 古代史謎解き紀行』『「始まりの国」淡路と「陰の王国」大阪 古代史謎解き紀行』『「大乱の都」京都争奪 古代史謎解き紀行』『神武天皇 vs. 卑弥呼 ヤマト建国を推理する』など多数。最新刊は『古代史の正体 縄文から平安まで』。
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