サウジ戦略判断でも消えない石油市場「政治化」の火種

執筆者:小山 堅 2021年12月13日
エリア: 中東 北米
ガソリン価格高騰は米バイデン政権にとって看過できない問題だ ⓒEPA=時事
米バイデン政権が11月23日に発表、日本ほか韓国・中国・インド・英国が協調する石油備蓄放出は一定のアナウンス効果を上げた。しかし、産油国と消費国が「相互・対抗的」に原油価格に影響を及ぼす構図は、「脱炭素化」や中東情勢をめぐる双方の政治的利害対立に石油市場が翻弄される危険も孕んでいる。

先進国の石油在庫は過去5年平均を大きく下回る水準に

 原油価格が2014年以来、7年ぶりの高値圏での推移となっている。米国産WTI原油の先物価格は、9月に70ドル、10月に80ドルを超え、直近の最高値では約85ドルを記録した。原油価格80ドル超えで、世界経済への悪影響やインフレ懸念の一要因として世界的な警戒感も高まった。

 年初は40ドル台でスタートした原油価格がなぜここまで上昇してきたのか。その基本的な原因は、需給バランスのタイト化であり、その象徴が石油在庫の低下である。世界の石油需要は、2020年のコロナ禍による甚大な影響で「需要蒸発」とも称された劇的な減少から立ち直り、昨年後半以降、緩やかに回復を続けてきた。2021年、2022年と連続で増加を続け、世界の石油需要は、来年はコロナ前(2019年)の水準を回復するものと見込まれている。

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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執筆者プロフィール
小山 堅(こやまけん) 日本エネルギー経済研究所専務理事・首席研究員。早稲田大学大学院経済学修士修了後、1986年日本エネルギー経済研究所入所、英ダンディ大学にて博士号取得。研究分野は国際石油・エネルギー情勢の分析、アジア・太平洋地域のエネルギー市場・政策動向の分析、エネルギー安全保障問題。政府のエネルギー関連審議会委員などを歴任。2013年から東京大公共政策大学院客員教授。2017年から東京工業大学科学技術創成研究院特任教授。主な著書に『中東とISの地政学 イスラーム、アメリカ、ロシアから読む21世紀』(共著、朝日新聞出版)、『国際エネルギー情勢と日本』(共著、エネルギーフォーラム新書)など。
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