政治的なるものとは~思索のための1冊 (3)

政治家とは歴史という名の法廷で裁かれる被告――中曽根康弘『自省録』

執筆者:橋本五郎 2022年6月5日
カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
エリア: アジア
1983年1月、会談前に握手する全斗煥韓国大統領(右)と中曽根康弘首相 ©時事通信フォト
田中角栄の圧倒的な影響力のもとで発足し、当初は「田中曽根内閣」とも揶揄された中曽根康弘政権。しかし中曽根は、首相就任直後に日韓関係を劇的に改善させ、人事権を巧みに駆使して長期政権を築いた。「戦後政治の総決算」を掲げ、国鉄民営化を断行した権力者の哲学とは――。

 

 2003年10月、85歳の元首相中曽根康弘はまったく不本意な形で政界を引退した。時の首相小泉純一郎に、自民党執行部との「終身比例代表1位」の約束を反故にされ、「政治的テロ」だと怒りながらも退かざるを得なかった。その日、私は中曽根の無念にも思いを馳せて、読売新聞紙上(同年10月28日付朝刊)で次のような「送別の辞」を贈った。

 

 戦後を代表する首相を三人挙げろと言われれば、躊躇なく、吉田茂、佐藤榮作、中曽根康弘を挙げる。順序を付けよと求められれば、迷いなく中曽根、吉田、佐藤と答える。なぜか。

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執筆者プロフィール
橋本五郎(はしもとごろう) 『読売新聞』特別編集委員。1946年秋田県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、読売新聞社に入社。論説委員、政治部長、編集局次長を歴任。2006年より現職。『読売新聞』紙上で「五郎ワールド」を連載するほか、20年以上にわたって書評委員を務める。日本テレビ『スッキリ』、読売テレビ『ウェークアップ!ぷらす』、『情報ライブミヤネ屋』ではレギュラーコメンテーターとして活躍中。2014年度日本記者クラブ賞を受賞。著書に『範は歴史にあり』(藤原書店)『「二回半」読む――書評の仕事1995-2011』(以上、藤原書店)『不滅の遠藤実』(共編、藤原書店)『総理の器量』『総理の覚悟』(以上、中公新書ラクレ)『一も人、二も人、三も人――心に響く51の言葉』(中央公論新社)『官房長官と幹事長――政権を支えた仕事師たちの才覚』(青春出版社)など多数。
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