残された謎、遺された人生

執筆者:浜田哲二
執筆者:浜田律子
2022年11月6日
タグ: 日本
エリア: アジア
沖縄戦の遺族らと共に戦没者の名前を見つめる北海道沖縄会の黒田元会長(右から2人目) ©浜田哲二
沖縄で戦死した兵士を思い続け、生涯独身を貫いた一人の女性。その人生を追うと、いくつもの謎が浮かび上がってくる。取材で解けた謎もあれば、永遠に解けないだろう謎もある。それでも確実に言えるのは、一人の死が生き残った人々の人生に与える影響には限りがないということだ。(こちらの第3部から続きます)

 

「心の夫」のために貯めた3511万円

 北海道沖縄会で会計を担当していた鳴海美栄子さんは、1円の誤りも許さない厳格な仕事ぶりで一部の会員からは煙たがられていた。亡くなった大道正公さんの甥っ子を実の息子のように可愛がった、という美栄子さんのイメージとは、正直ギャップがある。だが、彼女がそこまでお金にうるさかった理由は、今から十数年前、札幌市内の藻岩山にあった戦没者慰霊碑を移転する折に判明した。移転費用の捻出に頭を抱えていた役員らが、美栄子さんが残した1通の貯金通帳に気づく。確認したところ、3511万円の残高が記載されていた。

カテゴリ: 社会
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執筆者プロフィール
浜田哲二(はまだてつじ) 元朝日新聞カメラマン。1962年生まれ。2010年に退職後、青森県の白神山地の麓にある深浦町へ移住し、フリーランスで活動中。沖縄県で20年以上、遺骨収集を続けている。日本写真家協会(JPS)会員。
執筆者プロフィール
浜田律子(はまだりつこ) 元読売新聞記者。1964年生まれ 奈良女子大学理学部生物学科・修士課程修了。
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