
「率直に言って、カタールがこの(日本という)草分け的な市場の主要なエネルギー供給者でなくなった今、日本が主催するLNGに関する会議で私が講演するのは、ちょっと違和感があります」
カタールのサアド・アル=カアビー・エネルギー担当国務大臣からこのような発言が飛び出したのは、2022年9月29日にオンラインで開催された第11回「LNG産消会議」の開会セッションでのことだった。同会議は日本がLNGの生産国と消費国との対話・協調を促進すべく2012年から主催しているもので、日本の経済産業大臣の開会挨拶の次にカタールのエネルギー大臣がスピーチするのが恒例だった。
ところが昨年は、西村康稔経産大臣が開会挨拶を終えると、この10年間の二国間の交誼などなかったかのような辛辣な物言いが冒頭から飛び出したのである。
「裏切り」に映った契約終了
カアビー大臣の発言の背景にあるのは、日本がカタールと結んでいた長期大口LNG調達契約の終了だ。
日本がカタールと契約を結んだのは1992年。中部電力が年間400万トンを25年間調達する長期契約をカタール・ガス社と締結し、1997年1月に中部電力の川越火力発電所向けに初めてのLNGの引き渡しが行われた。カタール・ガスは中部電力の本店がある名古屋の東新町から徒歩5分以内にあるNHK名古屋放送センタービル内に連絡事務所を構え、中部電力と蜜月な関係を築いてきた。
しかし、2015年に中部電力が東京電力ホールディングス傘下の東京電力FP(ヒュエル&パワー)と合弁でJERAを設立し、LNG契約がJERAに移管されて以降、LNG調達先の多角化を進めるJERAとカタール・ガスとの関係は希薄化して……

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