広島サミット「ゼレンスキー大統領出席」がもたらす複雑さ
Foresight World Watcher's 4Tips

今週もお疲れ様でした。5月19日から開幕したG7広島サミットは、ゼレンスキー大統領の出席が報じられたことで「平和サミット」としての意義に一層の重みが増しました。一方で、ロシア・ウクライナ戦争に「中立」の立場を示してきたG7以外の招待国に対し、議長国日本は難しい舵取りを迫られることにもなりそうです。
フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事4本、皆様もよろしければご一緒に。
Volodymyr Zelenskyy to attend G7 summit in person【Henry Foy、Kana Inagaki、Demetri Sevastopulo/Financial Times/5月19日付】
「ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領は、今週末のG7サミットに対面で出席すると、準備に携わる関係者4人が『フィナンシャル・タイムズ[FT]』に語った。彼らによるとゼレンスキーは、日曜日に広島で行われる議論に参加する見込みだ」
英FT紙が日本時間の5月19日昼過ぎ、このように第一報を伝えると、国内のメディアは色めきたった。
米国の政府債務上限問題でジョー・バイデン大統領の訪日が危ぶまれるなど、日本政府にとっては開幕前から想定外の話題に翻弄されるサミットとなったが、ゼレンスキー大統領についても「オンラインではなく対面で参加するのではないか」との観測は事前に出ていた。
FT紙のスクープの後も海外メディアが比較的に落ち着いていたのはそのためだが、一方、国内メディアの中には相当慌てたところもあったようだ。背景には、外務省など日本側が、このゼレンスキー来日観測を否定し続けてきたことがある。
インドやブラジルといったグローバルサウスの首脳も招いた日本、さらには米国の政府の立ち位置を、FT紙は次のように紹介している。
「複数の政府筋は、安全保障上の理由から彼の訪問がキャンセルされる可能性があると警告している。7年ぶりにアジアで開催されるサミットにおいてウクライナでの戦争だけに焦点が当たることのないようにという岸田文雄首相の努力が、ゼレンスキーの出席によって複雑なものになりかねない」
「岸田は、ウクライナでの戦争のみならず、インド太平洋地域の安全保障問題や発展途上国への働きかけにも焦点を当てた会合にしたいと考えている。米国も、インド太平洋に強くフォーカスし、中国へのアプローチについて各国ができるかぎり結束を示せるようにしたいとの意向だ」
一方、ゼレンスキー大統領自らが乗り込んでくる形となるウクライナ側の狙いについて、記事はリード(前文)で「大統領は、西側による支援の強化とG7加盟国以外から出席するインドとブラジルによる後ろ盾の確保を目指す」としている。……

「フォーサイト」は、月額800円のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。