日米韓「協力強化」には警告もあり

Foresight World Watcher's 4Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2023年8月18日
エリア: アジア 北米
政治的な流れが再び変わってしまう前に……[政府専用機で米国に向けて出発する岸田文雄首相(中央)=2023年8月17日午後、東京・羽田空港](C)時事

 今週もお疲れ様でした。

 日本時間8月19日未明から日米韓の三カ国首脳会談が始まります。安保の利害を共にしつつ、政権交代や日韓関係悪化で議論の積み上げが難しかった3カ国ですが、今後の首脳会談は定例化される見通しです。脅威に想定される当の中国・北朝鮮を別にすれば、協力強化は概ねポジティブに捉えられているものの、無視できないのは副作用。「米国は不注意にも北京、モスクワ、平壌を接近させるかもしれない」「3カ国のパートナーシップが目指さないものも明確に示すことが重要」と指摘するのは、FA誌に掲載されたアンドリュー・ヨーらの論稿です。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。

America's Window of Opportunity in Asia【Andrew Yeo、Mireya Solís、Hanna Foreman/Foreign Affairs/8月15日付】

「今週後半、ジョー・バイデン米大統領は、日本の岸田文雄首相と韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領をキャンプ・デービッドに迎える。[中略]この数カ月の間に同盟3カ国の結束を緊密にしたのは、北朝鮮からのミサイルの脅威、そして中国の軍事力と意図に対する深い懸念だ」
「こうした共通の懸念は何十年も前から存在しており、一方、内政問題が――特にソウルと東京において――3カ国による戦略の調整の進展をしばしば妨げてきた。しかし現在、国際主義者のアメリカ大統領、朝鮮半島を越えた外交政策に野心を抱く大胆な韓国の指導者、そして積極的な安全保障政策の強化に力を注ぐ日本の首相がいる。この組み合わせは三国間協力のまたとない好機であり、バイデンはこれを利用しようとしている」

 米「フォーリン・アフェアーズ」誌サイトに8月15日付で掲載された「アジアにおけるアメリカのチャンスの窓」は、このように始まる。続いて示される日韓関係の微妙さや、それによる日米韓3カ国の協力体制の構築・維持の難しさの多くは、日本の読者にとってはよく知るところだ。

 しかし、共同筆者である米ブルッキングス研究所のアンドリュー・ヨー(上級研究員兼アメリカ・カソリック大教授)、ミレヤ・ソリス(上席研究員兼東アジア政策研究センター所長)、ハンナ・フォアマン(東アジア政策研究センター助手)の3名は、今回の首脳会談について興味深い指摘をいくつか行っている。

 まずは3カ国協力の強化に取り組む米側の顔ぶれについて。

「現在バイデンの下で働いているアントニー・ブリンケン国務長官やカート・キャンベル国家安全保障会議インド太平洋担当調整官をはじめとするオバマ政権の元高官たちも、ハイレベルの3カ国会合を企画・実行した十分な経験を持っている。キャンベルは、三国関係再活性化の最大の原動力となった人物であり、日本と韓国における数十年の経験と深いネットワークを有している」

 こうした米側の体制の充実にもかかわらず、日米韓の協力の先行きは決して明るいばかりではなく、だからこそ今回の首脳会談の持つ意義は大きい――との指摘も、もうひとつの読みどころだ。

「尹の日本への関わり方はワシントンでは歓迎されているが、ソウルでは抵抗にさらされている。[中略]次の大統領選挙はまだ4年先だが、来年の国会選挙で議席を失うか、尹の任期の後に政権交代があれば、日中韓の協力は再び停滞する可能性がある。同様に、岸田の支持率の低迷や解散総選挙の時期についての憶測も進展の可能性を制限するかもしれず、また、日本で“韓国疲れ”が再燃するおそれもある」
「近い将来、バイデンは来年の再選キャンペーンに忙殺されるようになり、任期終了までに再び3カ国サミットを開催する余力は持たなくなるかもしれない。したがって、政治的な流れが再び変わる前に、3カ国の首脳がこの瞬間を最大限に活用することが不可欠だ」
「チャンスの窓は閉ざされつつあり、バイデンは迅速に行動する必要がある」

[SITUATION REPORT]Biden's Big Bet on Japan and South Korea【Robbie Gramer、Jack Detsch/Foreign Policy/8月17日付】

 同様の見方は、米「フォーリン・ポリシー」誌の週刊ニューズレター「シチュエーション・リポート」の最新8月17日号でも打ち出された。同誌記者のロビー・グレイマーとジャック・ディッチはこんなふうに書いている。

「この3人の首脳が現職を退いた後も、楽しい時間は続くのだろうか? 尹と岸田の先任者である文在寅(ムン・ジェイン)と安倍晋三は個人的に不仲で、文が日本との関係修復にほとんど関心を払わなかったことはソウルと東京では公然の秘密だった。尹と岸田の後任者が3カ国協力のモメンタムを維持できるかどうかは不透明だ」
「この点に加え、2024年の米大統領選に付随する巨大な疑問符という問題もある。出馬する誰もが自分が対中タカ派であることを証明しようと躍起になっているが、次にホワイトハウス入りする人物が、尹と岸田が今週バイデンと固めるような同盟関係を優先させるかどうかは明確でない」

 なお、今回の日米韓首脳会議に至る日韓融和の“功労者”については、「シチュエーション・リポート」は次のような見立てを示している。

「功績の多くは、昨年5月に大統領に就任し、日本との関係修復を最優先課題と位置づけた、保守派の指導者である尹に帰するものだと、複数の専門家が述べている。一方の岸田も[尹の取り組みを]受け入れてきた」

 また、キャンプ・デービッドでの会談で合意される見通しの項目についても予測。

■3カ国の情報共有を強化する新たなイニシアティブの発足

■早期警戒ミサイル発射検知のアップグレード……

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カテゴリ: 政治 経済・ビジネス
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