Weekly北朝鮮『労働新聞』 (30)

朝露首脳会談を「歴史的な対面」と表現(2023年9月10日~9月16日)

執筆者:礒﨑敦仁 2023年9月19日
タグ: 北朝鮮 金正恩
エリア: アジア
9月13日に行われた朝露首脳会談は、「反帝」での連帯が強調された(『労働新聞』HPより)
4年ぶりに行われた朝露首脳会談では、「帝国主義者の軍事的威嚇と挑発」に対する両国の連帯が強調された。プーチン大統領の敬称は「閣下」から「同志」に格上げ、同盟国・中国よりもロシアの方が「反帝」では一致しているとの判断が見て取れる。また、英チャールズ3世からの建国75周年を祝う祝電が初めて掲載された。『労働新聞』注目記事を毎週解読
 

 9月9日の建国75周年行事の直後に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が訪露したため、動静報道が続いた。

 14日付はプーチン大統領との「歴史的な対面」について4ページを使って報じた。前回首脳会談を報じた2019年4月26日付は「対面」に「歴史的な」などという修飾語は用いられず、今回のように「朝露関係発展の新たな里程標を用意した事変的契機」といった表題も掲げられなかった。しかも当時の「プーチン閣下」は「プーチン同志」に格上げされている。

 ロシア極東アムール州のボストーチヌイ宇宙基地で開催された首脳会談の北朝鮮側同席者は紹介順に、崔善姫(チェ・ソニ)外相、朴正天(パク・ジョンチョン)朝鮮人民軍元帥、強純男(カン・スンナム)国防相、呉秀容(オ・スヨン)朝鮮労働党中央委員会書記、朴泰成(パク・テソン)同書記、任天一(イム・チョニル)外務次官であった。テタテの会談(通訳のみの1対1の会談)も行われ、両首脳は「強大な国家建設の戦略的目標を実現するための政治、経済、軍事、文化の各方面で収められている注目に値する成果と建設的な協力の経験、国家繁栄と両国人民の福利のための今後の発展方向に対する深みのある意見を交わした」という。

 目立ったのは、「人類の自主性と進歩、平和な生を侵奪しようとする帝国主義者の軍事的威嚇と挑発、強権と専横を粉砕するための共同戦線で両国間の戦略・戦術的協同をいっそう緊密にし、強力に支持、連帯しながら力を合わせて国家の主権と発展利益、地域と世界の平和と安全、国際的正義を守っていく上で提起される重大な問題と当面の協力事項を虚心坦懐に討議し、満足な合意と見解一致を遂げた」といったくだりである。……

カテゴリ: 軍事・防衛 政治
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執筆者プロフィール
礒﨑敦仁(いそざきあつひと) 慶應義塾大学教授。専門は北朝鮮政治。1975年生まれ。慶應義塾大学商学部中退。韓国・ソウル大学大学院博士課程に留学。在中国日本国大使館専門調査員、外務省第三国際情報官室専門分析員、警察大学校専門講師、米国・ジョージワシントン大学客員研究員、ウッドロー・ウィルソンセンター客員研究員など歴任。著書に『北朝鮮と観光』(毎日新聞出版)、共著に『最新版北朝鮮入門』(東洋経済新報社)など。
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