ゾンビ、フランケンシュタイン、YCC

Foresight World Watcher's 6Tips

執筆者:フォーサイト編集部 2023年11月3日
タグ: 日銀 自衛隊
エリア: アジア
ちょうどハロウィンと被ったためか、海外メディアでは「ゾンビ」「フランケンシュタイン」とのパンチラインが躍った[金融政策決定会合後、記者会見する日本銀行の植田和男総裁=10月31日、東京都中央区の同本店](C)時事

 今週もお疲れ様でした。日銀が10月31の金融政策決定会合で打ち出した長短金利操作(YCC=イールドカーブ・コントロール)の修正は、これまで長期金利の事実上の上限を1%としていたものを「1%をめど」とするという小幅なものになりました。

 YCCは10年国債金利の上昇を抑えるために日銀が大量の国債を買い入れるかなり特殊な政策であり、いまの円安・物価高を後押ししてしまう副作用も見逃せません。YCCの撤廃からマイナス金利解除へと進むに越したことはないのですが、悩ましいのは「賃金の上昇を伴う形での2%の物価安定目標の実現」という植田総裁が打ち出している方針です。

 市場では、植田日銀は来年の春闘の賃上げ状況を見極めてから動くという見方が多数派ながら、問題はそれまで景気がもってくれるのか。もし景気腰折れが先に来れば、異次元緩和の出口は遠のきます。それでも、国内では「めど」の小幅修正であっても重要な前進とする向きが多い一方、海外メディアの評価はどうなのか。WSJ紙、FT紙の関連記事を取り上げました。

 フォーサイト編集部が週末に熟読したい記事、皆様もよろしければご一緒に。

[EDITRIAL]The Yield of Japan's Bad Policies【Wall Street Journal/10月31日付】

[HEARD ON THE STREET]Yield Curve Control Joins the Living Dead【Jacky Wong/Wall Street Journal/10月31日付】

 10月下旬から11月初頭にかけ、ECB(欧州中央銀行)理事会に始まり、日銀による金融政策決定会合、米FOMC(連邦公開市場委員会)と、ユーロ・円・ドル圏の金融政策の意思決定を担う会合が続いてきた。

 欧州と米国では政策金利が据え置かれ、これまで続いてきた利上げがいったん打ち止めになる流れが見えたとされる一方、日本ではマイナス金利政策の続行と並んで長期金利の誘導幅の拡大が決まり、異次元の緩和政策が出口へとさらに追い込まれる形となった。

 米「ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)」紙は10月31日の日銀政策決定会合の終了を受けて、同日付で複数の記事を発信。次のような見出しとリードに同紙の見方が集約されている。

■「日本の筋の悪い政策のツケ(イールド)──東京の中央銀行、国債相場の管理を一部放棄」(社説)

(同紙日本版での見出しは「日銀のYCCという怪物」)

■「イールドカーブ・コントロールはゾンビの仲間入り──国債利回りの上限撤廃という日本がハロウィンに下した決定で『イールドカーブ・コントロール』は棺桶に片足を踏み入れた。だが、まだ影響は残る」(コラム「ストリートの噂」)

(同じく「日銀のYCC柔軟化、いずれは円高招くか」)

「日銀は火曜日[31日]、フランケンシュタイン博士の生み出したモンスターはまだ死んでいないと発表し、ハロウィンに足跡を印した。植田和男総裁は今週、東京の中央銀行が近年続けてきた長期金利抑制策を、墓に葬るのではなく生命維持装置に送ったのだ」

 WSJ紙の社説はこのように始まり、日銀がイールドカーブ・コントロールにしがみつくことを次のように厳しく批判している。……

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カテゴリ: 経済・ビジネス
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