「太陽節」の名称を避け始めた金正恩政権(2024年4月14日~4月20日)

4月14日付1面は、中国の趙楽際・全国人民代表大会常務委員会委員長を団長とする党及び政府の代表団に金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が接見したことを報じた。北朝鮮側の同席者は一切報じられず、掲載された写真を見ても中国側は9人が着席している一方、北朝鮮側は金正恩の後ろに通訳が座っているだけであった。金正恩と趙楽際は、両党・両国の親善協力関係を発展させることともに、「互いが関心を寄せる重要問題について虚心坦懐に論議した」とされるが、「重要問題」の具体的な内容は明らかになっていない。
2面上段では、金正恩が催した午餐に趙甬元(チョ・ヨンウォン)党書記、李日煥(リ・イルファン)党書記、崔善姫(チェ・ソニ)外相、金成男(キム・ソンナム)党国際部長、金与正(キム・ヨジョン)党副部長が陪席したことなどが紹介された。下段では、金正恩が中国中央民族楽団の特別音楽会を観覧したことが報じられた。主たる同席者は午餐のときと同じである。
4月15日は故・金日成(キム・イルソン)主席の誕生日であった。韓国メディアは、北朝鮮が金日成誕生日に際して従来の「太陽節」との名称を使わず、「4月の名節」などの名称に置き換えていると報じた。『労働新聞』では「太陽節」という用語が全く用いられていないわけではなく、15日付第2面には「偉大な首領金日成同志と偉大な領導者金正日同志の銅像に民族最大の慶事である太陽節に際して花籠進呈」と題する記事が掲載された。ただし、「太陽節」をタイトルに含んだ記事は今年に入ってからこれだけである。昨年は4月の1カ月間だけでも32本の記事のタイトルで「太陽節」に言及があったことから、政策転換の方針が下されたことは間違いない。金日成誕生日が金正日(キム・ジョンイル)誕生日(2月16日)と同様に「民族最大の慶事」であるとの位置づけには変わりがなく、今回もそのことが連呼されている。「4月の名節」は今月から急増したものの、以前から使われてきた表現である。
なぜ「太陽節」との表現を避けるようになったのかは判然としない。金正恩は数年前から金日成、金正日と同様に「太陽」に喩えられるようになっており、ここにきて金日成イコール「太陽」との論理を否定する必然性はないように思われる。
金正恩は、祖父と父親の誕生日に、その遺体が永久安置されている錦繍山(クムスサン)太陽宮殿を毎年欠かさず訪れていたが、今年も昨年に続いて参拝しなかった。

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