バイデン政権の対中制裁関税は「なんたる茶番」
Foresight World Watcher's 5Tips

ウラジーミル・プーチン露大統領が、5月7日に始まった通算5期目の任期で最初の外遊先に選んだのは中国でした。習近平国家主席との共同声明は「戦略的関係の深化」を押し出したものになりましたが、ロシア・ウクライナ戦争への関与のあり方を筆頭に思惑が必ずしも一致するわけではなく、両国関係はプーチン訪中後も従来の延長線上に止まるでしょう。
ただし、その「戦略的関係」が特に経済・貿易問題について語られたことは重要な意味を持つと思われます。中国にとって経済問題は内政安定のためにも喫緊の課題。過剰生産に対する欧米の批判が高まる中で、今回は国際社会に対して中国の正当性をアピールできるチャンスでした。実際、米国は保護主義へと急速に舵を切りつつあるようです。「グローバルなサプライチェーンの安定」が、米国主導の国際秩序を攻撃する絶好の材料に浮上している状況について、欧米メディアからも米国への批判の声が上がっています。
フォーサイト編集部が週末に熟読したい海外メディア記事5本、皆様もよろしければご一緒に。
America's 100% tariffs on Chinese EVs: bad policy, worse leadership【Economist/5月15日付】
プーチン大統領が5月16日、中国を訪問した。その2日前の14日、米国のジョー・バイデン大統領は、中国製のEVやソーラーパネル、鉄鋼などへの関税を大幅に引き上げる方針を発表している。“習近平の中国”に対してさらに接近しようとするロシアと、そこからさらに離れようとする米国――この対比がいっそう明確になった形だ。
このうち、まず米国の対中関税率の引き上げをめぐっては、特に興味深い記事に何本か遭遇した。たとえば、英「エコノミスト」誌は「アメリカの対中国製EV100%関税――悪しき政策、より悪しきリーダーシップ」(5月15日付)で、バイデン政権による決定を「非常に残念(deeply regrettable)」なものだと批判し、「なんたる茶番だ」と嘆く。
「今日の米企業は、中国国内において1万ドル以下で販売されているBYDの『シーガル』との競争を恐れている。現在、米国メーカーはこれより劣るEVを3倍の価格で売ることができている」
「さらに許しがたいのは、バイデン政権がどのように関税を課そうとしたかということだ。政府は当然、貿易の政治的コストを管理したがる。ルールにもとづく貿易システムが、不公正な競争に対するメカニズムを備えているのはそのためだ」

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