
歴史に残る選挙となった。欧州議会選挙は、国民生活に直結する問題を扱うわけではないため、従来それほど関心を集めなかったのだが、今回は選挙前から注目を集めていた。ポピュリスト右派や極右の政党の躍進が予想されており、それにより今後のEU(欧州連合)レベル、各国レベルの政治が大きく影響されると見られていたからだ。
各政権の試練は仏下院解散、独の9月地方選など
加盟27カ国それぞれで自国の制度で選挙が行われるため、全体的な影響を見通すのは容易ではないが、多くの国で極右やポピュリスト右派政党が躍進したのは事実である。最も顕著なのはフランスであり、第一党の地位を失ったエマニュエル・マクロン大統領は、仏下院解散の手に打って出た。このままでは政権の推進力が失われるばかりという判断の賭けであろうが、吉と出るか凶と出るか。かなり危険な賭けであることは否めない。かつてキャメロン英首相が保守派をまとめるために、ブレグジットの国民投票を宣言した時のことを、少なからぬ人が思い出したはずだ。
中道左派三党の連立である、独ショルツ政権にも大きな打撃だ。与党3党すべてが得票率を減らしたが、その中で緑の党の-8.6%が最も大きな減り方であった。オラフ・ショルツ氏の政党である社会民主党(SPD)は-1.9%、自由民主党(FDP)は-0.2%となっている。野党で伝統的保守のCDU/CSU(キリスト教民主同盟/社会同盟)が30.0%で第一党だが、事前に中国スパイ問題など、いくつものスキャンダルに見舞われたにもかかわらず、極右のAfD(ドイツのための選択肢)が15.9%で第二政党の位置につけた。同じく右翼的な政策を掲げるBSW(ザラ・ヴァーゲンクネヒト同盟)と合わせると、右派の政党が22.1%を得たことになる。投票率は前回61.4%から上がって、64.8%とかなり高かったにもかかわらずである。……

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